九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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各種運動療法が関節と筋に与える負荷の推定
*竹下 康文*川田 将之*宮﨑 宣丞*中井 雄貴*中辻 晋太郎*林 浩之*木山 良二
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p. 1

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抄録

【目的】

運動療法には背臥位,座位,立位など様々な肢位の運動が用いられる。臨床では、症例の状況に応じて、適切な運動療法を選択する必要がある。しかし、関節や筋への負荷を示す指標である関節反力や筋張力に関する先行研究では,立位における運動が分析されることが多く、座位や臥位における運動については検討がなされていない。本研究の目的は、筋骨格モデルシミュレーションを用い、座位や臥位における運動療法中の下肢関節と筋の負荷を推定することである。

【方法】

対象は健常成人男性1名(年齢:30歳,身長:165.0 cm,体重:52.0 kg)とした。分析する運動は、立位におけるスクワット、ランジ、座位における股関節屈曲、膝関節伸展、臥位でのStraight Leg Rising(SLR)、ブリッジとした。分析対象は右下肢とし、ランジは右下肢を前方へ踏み出した。三次元動作解析装置(VICON、Oxford Metrics社製)および床反力計(BP600400、AMTI社製)にてモーションキャプチャーを行い、得られたデータを筋骨格モデルシミュレーションソフト(AnyBody7.1,AnyBody Technology社)に入力し、関節反力と筋張力を算出した。関節反力は、股関節、脛骨大腿関節における3方向への合力の最大値、筋張力は、下肢の主要筋の最大値を算出し、5回の施行の平均値を比較した。座位や臥位における運動の解析では、椅子やプラットフォームから作用する反力を最適化法により推定して解析を行った。また、歩行についても分析を行い,各動作の関節反力と筋張力は歩行中の最大値で正規化した。

【結果】

股関節反力はスクワット61.0%、ランジ72.0%、座位における股関節屈曲27.9%、膝関節伸展24.5%、臥位でのSLR33.4%、ブリッジ37.7%であった。脛骨大腿関節反力はスクワット97.4%、ランジ81.5%、座位における股関節屈曲6.0%、膝関節伸展6.3%、臥位でのSLR12.1%、ブリッジ11.4%であった。また、筋張力はスクワット、ランジでは、大腿四頭筋が111%-201.5%、大殿筋が115.2%-126.5%、大内転筋が168.5%-205.9%と歩行と比較して大きかった。また、座位における股関節屈曲では、腸腰筋の筋張力は105%であった。

【考察】

スクワット、ランジなどの運動は歩行と比較して、筋張力が大きかった。座位・臥位における運動では、関節反力は立位における運動や歩行よりは小さいが、種類によっては歩行と同程度の筋張力を要求されるものもあった。したがって、関節への負荷を考慮して歩行へ向けて段階的に介入する場合、座位や臥位での運動から開始し、立位、歩行へ移行していくことにより、関節への負荷を軽減したうえで筋力トレーニングが可能と考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当施設における倫理審査委員会において承認を受け(承認番号:180113疫)、ヘルシンキ宣言に則り研究を行った。対象者には説明を行い、同意を得た上で実施した。

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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