主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 104
【目的】
自律神経は呼吸や心拍変動に関与しており、それらは、運動負荷や疼痛、ストレスなど様々な要因によって変動する。副交感神経の亢進がリラックス効果や不安感、疼痛の緩和に関係しているとの報告がある。そこで、運動器疾患を有する外来リハビリテーションを行っている患者に対して、運動器理学療法実施前後に心拍変動解析法による自律神経機能検査を用いて詳細な自律神機能を評価することを目的とした。
【方法】
対象は当院に通院する運動器疾患患者10名(男性:3名、女性:7名、平均年齢61.9±9.1歳)、その内訳は腰椎疾患:5例、頸椎疾患:2例、股関節疾患:2例、肩関節疾患:1例であった。自律神経機能評価には自律神経機能検査機器(クロスウェル社製)を用いて、運動器理学療法実施前後に測定を行った。測定方法は安静座位(2分)-起立・立位(2分)-着席座位(1分)の間の自律神経活動を計測する。心電図によるR-R間隔の周波数解析から0.04-0.15Hzの低周波数成分(LF)、0.15-0.4Hzの高周波数成分(HF)に注目した。LFは交感神経・副交感神経の両方に影響を受けるが、主に交感神経活動を反映していると言われている。HFは副交感神経活動を主に反映していると考えられている。そこで、本研究では各姿位におけるLF/HF比に着目して検討した。LF/HF比は主に交感神経機能の指標として用いられる。運動器理学療法はリラクゼーション、ストレッチング運動、筋力強化運動、動作練習を主体として約20分実施した。運動器理学療法前を対象者各個人の基準値として安静座位-起立(①)、起立-立位(②)、立位-着席座位(③)のそれぞれにおいて、運動器理学療法後に基準値と比較して交感神経優位もしくは副交感神経優位に変化が起きているかを検討した。
【結果】
運動器理学療法前後どちらも平均LF/HF比は安静座位と比較して起立時に上昇し、立位時に低下、着席で再び上昇する変化を示した。各個人での運動器理学療法後は基準値と比較して①で7例が副交感神経活動、②で5例が副交感神経活動、③では6例で交感神経活動が大きくなった。
【考察】
運動器理学療法を実施したことによって副交感神経活動がより活発になる傾向であったが、林らは高強度の運動を実施した後に交感神経活動が賦活したままで、かつ高い心拍数が維持されること、低強度運動にて交感神経活動が運動前と同等の活動レベルへ早く回復し、迷走神経活動が賦活されると述べている。今回の研究において運動器理学療法における運動強度の設定を行ってないことからこのような結果になったと考える。また、自律神経活動は個人によってばらつきが大きいため、症例数を増加させてさらに検討していく必要がある。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には口頭にて本研究の趣旨を説明したのち、参加の同意を得たうえで実施した。また、本研究は霧島整形外科倫理審査委員会の承認(承認番号:00019)を得て行った。