九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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年長児における足部アーチ高率と運動能力の関連
*森 健朗*久保 温子*大田尾 浩*満丸 望
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キーワード: 足部アーチ, 幼児, 運動能力
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p. 12

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抄録

【目的】

近年、子どもの外遊びや裸足で遊ぶ機会が減少し、子どもの体力、運動能力の低下や偏平足の増加が問題視されている。小学生を対象とした足部アーチ構造や運動能力についての先行研究は多く報告されているが、幼児を対象としたものは少ない。そこで、本研究の目的は年長児における足部アーチ高率と、それが運動能力に及ぼす影響について調査し、明らかにすることである。

【方法】

A県の保育園に通う年長児38名(男児20名、女児18名)を対象とした。身長、体重ならびに握力を測定後、運動能力の指標として、文部科学省の示した幼児運動能力調査より体支持時間、立ち幅跳び、両足連続跳び、ソフトボール投げ、25m走、捕球を行った。また、柔軟性を評価するために長座体前屈を行った。実施方法はすべて幼児運動能力調査実施要項に従い実施した。すべての項目は測定前に示範し、運動に失敗した場合はやり直した。さらに、足部アーチ高率を調べるために足長と舟状骨高をメジャーにて測定した。

足部アーチ高率は、舟状骨高を足長で除して計算した。なお、足長は石坂らの方法にならい、踵骨後面から第一中足骨頭までの距離とした。統計分析は、アーチ高率の左右間をWilcoxonの符号順位和検定で比較した。アーチ高率と各測定項目との関係はPearsonの相関係数を用いて検討した。なお、統計処理はEZRver.1.38を用い、統計学的有意水準は5%とした。

【結果】

左足のアーチ高率の平均値及び標準偏差は20.6±3.5(%)、右足のアーチ高率では20.1±3.0(%)であり2群間に有意差は認められなかった。また、足部アーチ高率と運動能力テストの各項目との間に有意な相関は認められなかった。

【考察】

今回の結果から、年長児におけるアーチ高率は左右差なく発達していることが示唆された。また、年長児ではアーチ高率と運動能力の関連は認められなかった。

鈴木らは小学1年生においてもアーチ高率と運動能力に相関は認めないと報告しており、年長児においても同様の結果となった。一方、小学校高学年を対象とした野田式分類による偏平足の研究では運動能力と関連があったと報告されている。しかし、幼児期は足部の皮下脂肪量が多く、footprintなどによる外見的アーチ評価よりも骨指標による評価が適していると言われている。同じ対象者で、骨指標による評価と外見的アーチ評価を評価したうえでそれぞれの評価方法と運動能力との相関に差がみられるのか比較する研究もしていきたいと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に則り、対象児の保護者には、研究の趣旨と内容、得られたデータは研究目的以外には使用しないことおよび個人情報の取り扱いには注意することに加えて研究への参加は自由であり、参加しなくても不利益にならないことを文書にて説明し、保護者より署名にて同意を得て研究を開始した。また対象児には平易な言葉で説明を行い評価実施前に了承を得た。

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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