九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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JOA Scoreと患者立脚評価法を用いての機能評価
WBI・%MVとの関連性
*小林 一裕*久保田 康仁*大熊 健悟*後藤 加奈*山本 基記
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キーワード: JOAScore, 患者立脚, WBI
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p. 54

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抄録

【目的】

臨床での疾患別機能評価として,日本整形外科学会の定める疾患別の治療成績判定基準(以下,JOAScore)が広く用いられている.しかし,これまでにJOAScore自体が検者側の評価基準が基本となり,患者側の機能障害が正確に反映されない,検査者と患者間で治療成績の印象に乖離があるなどの否定的な報告もされている.このような欠点を補うべく,近年日本整形外科学会が発表している,自記式回答質問紙表を用いた患者側への疾患に対するアンケート方式も導入されている.さらに近年,JOAScoreと患者立脚型の評価スケール(以下,患者立脚)との関連性についての報告も散見されている.そこでJOAScoreによる客観的評価に加え,患者側の主観的評価を用い,体重支持指数(Weight Bearing Index:以下,WBI)・筋質量(%Muscle Volume:以下,%MV)との関連性について比較検討したのでここに報告する.

【方法】

対象はH30年5月1日~H30年11月30日の間に当院外来通院患者の中の腰部関連疾患(以下,腰部)に該当する男女22名(体重55.4±10.1kg 年齢72.9±13歳)とした.外来通院開始時に日本整形外科学会腰痛疾患問診表 JOABPEQ(以下,BPEQ)に記入してもらい,同時期の患者の機能評価をJOAScoreで採点した.WBI測定には下腿下垂した端坐位,体幹垂直位で5秒間の最大等尺性収縮筋力を2回測定し,数値の高い方を採用した.測定にはハンドヘルドダイナモメーターを使用し,最大値を体重比百分率(%)に換算して行った. %MVは,Inbody770を用いて体成分分析を行い,身体総タンパク質量から体重で除した値を算出した.統計処理にはSPSSを用い, WBI,%MV,JOAScore,および患者立脚との関係についてはPearsonの相関係数を用い,有意水準はいずれも5%未満とした.結果は平均±標準偏差で表記した.

【結果】

WBI(89.9±14)と%MV(68.6±8.54)に正の相関(r=0.519,p < 0.01)を認めた.

JOA合計(39.8±8.95)と患者立脚合計(367.9±56.9)に正の相関(r=0.615,p < 0.05)を認めた.

WBIと患者立脚の合計も正の相関(r=0.52,p < 0.05)を認めた.

なかでもWBIと疼痛関連項目(61.5±26.6),心理的関連項目(52.8±20.5)に相関(r=0.517/r=0.55, p < 0.05)を認めた.

【考察】

JOAScoreと患者立脚間に相関を認め,先行研究を支持する形となった.加えて,WBIとJOAScore・患者立脚間に相関が認められ,なかでも疼痛関連項目や心理的項目と有意な相関を認めたことから,これらが筋機能や動作遂行能力の制限因子となっていることが示唆された.今後の課題として対象の年齢層を幅広くし,疾患別や重症度別での比較検討をすることで,機能回復に向けての経時的変化の確認がより明確となり,詳細な治療選択・提供が可能となると考える.

【倫理的配慮,説明と同意】

福岡県済生会大牟田病院の倫理委員会の承諾を受けた上で測定を実施した.ヘルシンキ宣言に基づき,すべての対象者には本研究の趣旨を口頭および文書で説明し,同意を得たのちに検証を行った.

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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