主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 55
【目的】
スクワットは荷重位で行う運動療法の一つとして頻用されている。先行研究では,関節角度やスタンス幅,足部の向き,スクワットフォーム等の因子に着目して検討されているが,運動速度と床反力,および筋活動との関連性について分析されたものは極めて少ない.
本研究の目的は,スクワット動作の速度の違いが床反力と筋活動に及ぼす影響を客観的に評価することである.
【方法】
対象は健常成人男性4名(平均年齢27.0±4.6歳,平均身長178.0±1.6cm,平均体重65.7±7.4kg)である.スクワット動作のスタンス幅は肩幅とし,上肢は腕組み肢位,膝関節の可動範囲は伸展0°~屈曲60°に設定した.運動速度は1回のスクワット動作に要する時間を2秒,4秒,6秒,8秒の4条件(以下2sec/回~8sec/回)とした.設定時間の50%で下降(膝関節を60°まで屈曲)し,残りの50%で上昇(膝関節を0°に伸展)するよう動作指導した.
床反力測定はアニマ社製4点支持型設置式フォースプレートを使用し,得られた床反力(以下,FRF)値の最大値を採用し、各対象者の体重で除して正規化(%FRF)した.筋活動は表面筋電図計を用い,スクワットおよび膝伸展最大等尺性収縮(以下,MVC)の筋活動を測定した.対象筋は内側広筋(以下,VM),外側広筋(以下,VL),大腿直筋(以下,RF)の3筋とした.得られた波形から単位時間あたりの積分値を算出し,スクワット課題のiEMGをMVCのiEMGで除して各筋の%MVCを算出した.
【結果】
スクワット動作における%FRFの平均は,2sec/回では116.0±4.0%,4sec/回で108.1±2.0%,6sec/回で106.6±1.6%,8sec/回で104.5±2.0%であり,動作速度が増すほど床反力も増加する傾向を示し,2sec/回で最も高い値となった.筋活動においても2sec/回が最も高値を示し,%MVCの平均値はVMでは71.4±22.6%,VLは76.6±40.9%,RFは62.0±43.1%であった.
【考察】
本研究の結果より,動作速度が増すほど高い床反力が生じ,膝伸展筋群が高く活動することが確認された.スクワット動作は下降相と上昇相で重心の運動方向が切り替わる.運動速度が速い場合,下降相では鉛直方向への加速度が加わった体重を支えながら下降運動にブレーキをかけなければならない.また,上昇相に転じると鉛直方向にかかる重力と反対方向に身体を挙上させる.そのため,膝伸展筋群が強く収縮し,膝伸展トルクを発生させた結果,高い床反力が生じたと考えられる.臨床では患者の特性や目的に応じて,スクワット動作の速度を設定して指導することが重要である.
【まとめ】
スクワット動作の速度が速いほど床反力及び筋活動値は高値を示した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究にかかわる全ての研究者は「ヘルシンキ宣言(2013年10月改訂)」および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(平成26年度文部科学省・厚生労働省告示第3号)」を遵守し,当院倫理委員会の承認(平成30年6月26日)を得て実施した.また,対象者には研究の趣旨を十分に説明の上,書面にて本人の了承を得た.