九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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歩行動作能力の低下した慢性期脳出血後遺症患者に対して長下肢装具使用による外来リハビリテーションは効果があるのか?
*岡 高史
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キーワード: 歩行, 長下肢装具, 慢性期
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p. 57

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抄録

【目的】

慢性期脳卒中片麻痺(CVA)患者は退院後に歩行安定性と歩行スピードが低下する場合が多い。先行研究によると、回復期CVA患者に対する長下肢装具(KAFO)を用いたリハビリテーション(リハ)は有効との報告は多数ある。しかしながら、慢性期CVA患者に対してKAFOを用いての歩行改善効果に着目した報告は少ない。そこで今回、慢性期CVA患者1例に対し、KAFOを用いた外来リハを行い、歩行動作能力に対する再学習効果を検討した。

【症例報告および方法】

60歳代女性、右被殻出血を発症し、第176病日で当院回復期病棟を退院した。退院後は介護保険サービスを利用し、2年以上在宅生活を行っていた。しかし、しばしば歩行時に転倒を繰り返す為、週1回、3ヶ月の外来リハ(選定療養算定)を実施することとなった。

退院時と外来リハ開始時の評価を比較すると、上田式12段階片麻痺機能検査(Grade)は下肢6、左下肢の表在及び深部感覚検査(Sensory)は中等度鈍麻のままで変化なく、左足関節背屈の関節可動域検査(Ankle ROM)は0度から-5度、Berg Balance Sale (BBS)は39から35へ低下していた。日常生活動作(ADL)は物的支持で全自立のままであった。

退院時の歩行は短下肢装具と1本杖にて自立。前型歩行で左下肢振り出し分回し、左立脚中期から後期にExtension thrust patternがみられた。外来リハ開始時は、半歩前型となり、体幹の左回旋とアライメント不良、左立脚初期に反張膝がみられた。10m歩行時間は17秒(歩数25)から50秒(歩数60)、Timed Up and Go test(TUG)は24秒から57秒へ低下していた。

外来リハの理学療法プログラムは、KAFOを用いて聴覚刺激とリズムを利用した介助下での前型歩行練習を中心に実施し、1回の介入で200m~300m実施した。自主練習は鏡を利用した視覚的アライメント改善練習、荷重を意識した起立練習を中心に指導した。これらを3ヶ月間で計10回行った。

【結果および考察】

Grade、Sensory、Ankle ROM、ADLに変化はみられなかった。BBSは38、10m歩行時間は27秒(歩数36)、TUGは36秒へ向上した。歩容は1歩前型歩行で体幹の左回旋も軽減した。しかし、左下肢振り出し分回しと左立脚初期の反張膝は残存した。

退院後の歩行動作能力低下の主な原因は、リハ頻度の低下により適切なフィードバックの機会が減少し、非麻痺側優位の動作が増加することで麻痺側感覚入力の低下に伴う神経ネットワークの退行、学習された不使用の増悪が残存機能をも低下させたと考えた。

学習された不使用の改善に対し、荷重感覚入力を基本としたニューロリハを意識して、適切な自主練習指導とKAFOの歩行練習をすることで歩行動作能力向上への効果はあると考える。

【まとめ】

退院後に歩行動作能力の低下した慢性期CVA患者に対して、ニューロリハを意識したKAFOを用いた理学療法は、少頻度の外来リハであっても歩行動作の再学習に期待できることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し、事前に所属施設の倫理審査委員会の承認を得た(承認番号2018-08)。また研究の実施に際し、対象者に研究について十分な説明を行い、同意を得た。

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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