主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 63
【目的】身体活動促進や栄養問題など従業員の健康づくりは重要な企業戦略となっている.当院では公的保険外の活動として,事業所と契約し運動指導を中心に健康づくり,いわゆる一次予防活動を実施している.今回は,事業所への介入方法の違いによる影響について検討したので報告する.
【方法】対象は,2017年7月~12月の間に運動施設において週1回介入した単独契約の大企業事業所の従業員をA群13名(平均年齢46.1±5.4歳,男性9名,女性4名)と,大分県中部保健所からの委託事業として1週目と5週目の2回のみ運動介入を実施した3つの中小企業事業所の従業員をB群47名(平均年齢48.2±11.2歳,男性17名,女性30名)として12週間後の結果について比較した.両群とも運動内容は,4秒筋トレと有酸素運動を中心に構成し,栄養やストレス等のミニ講座も実施した.その他,啓発ポスターを配布したり,独自の運動手帳を作成し目標や体重グラフ,運動実践の記録を見える化した.測定項目としては,身長,体重,腹囲,身体活動量の評価にIPAQ : International Physical Activity Questionnaire Short Versionを用いた.2群間の比較にはMann-Whitney U検定およびFisherの正確検定,介入前後の比較には対応のあるt検定およびWilcoxon符号付順位和検定を用い,有意水準は5%とした.
【結果】運動介入前の群間比較では,A群で有意に男性が多く(p < 0.05),肥満体型であった(A群vs B群,体重:81.4±14.6kg vs 62.8±13.2kg,p=.0006),BMI(28.3±3.5kg/m2 vs 24.0±3.9kg/m2,p=.0013),腹囲(96.0±9.8cm vs 84.3±11.4cm,p=.0032).運動介入の前後の比較は,A群では座位時間が有意に改善した(535.4±201.2分→339.2±227.0分,p=.0259)のみであったが,B群では腹囲が有意に減少し(84.3±11.4cm→82.8±11.3cm,p=.0026),身体活動時間が有意に延長し(総身体活動時間:196±334.5分→298.1±421.3分,p=.0093),座位時間が有意に減少していた(390.2±270.4分→306.4±229.4分,p=.0270).A群の運動教室参加頻度は中央値7回(2-10回)であった.
【考察】大企業事業所では各部署から検診で要指導になるような方をあつめ,毎週介入するという方法であったが,座位時間の短縮以外では有意な差は認められなかった.逆に中小企業のB群では,従業員数が少ないため職場ぐるみで運動や間食をしない等の取り組みが実践されており腹囲・座位時間の減少,身体活動時間の延長に繋がった.運動習慣の獲得や継続には,周囲の人のサポートも重要であり,この事業所内での関係性や支援の差が2群間の結果の差になったのではないかと考える.これらにより,大企業への介入の際には,いかに職場ぐるみで運動実践できるような職場環境を整備するかが重要であると考えた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院の倫理委員会の承認を受け(承認番号19-04),それぞれの事業所間とで定めた個人情報取り扱い事項を遵守したものである。事業所および対象者には,本事業の趣旨と内容,データの活用方法に関して文書による説明を行い,書面にて同意を得た。本事業の一部は大分県中部保健所からの委託事業として実施したが,その他利益相反に関する開示事項はない。