主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 124
【目的】
活動性の高い変形性膝関節症の関節温存術として、一般的に高位脛骨骨切り術が行われている。しかし矯正角度が大きい場合、生理的な膝関節面の傾斜に近づけるDouble Level Osteotomy( 以下DLO) が近年報告されている。今回、DLO が適応となる症例の術後急性期に担当させていただく機会を得たが、DLO術後の理学療法の内容や経過についての報告は少ないのが現状である。その為手術による侵襲やアライメントの変化が膝関節可動域や歩行へ及ぼす影響の考察を行い術後の経過を予測し介入することで良好な経過を得られた為、以下に報告する。
【症例】
46 歳女性 身長158cm 体重79kg診断名:右変形性膝関節症職業:事務職 趣味:バレーボール手術:右DLO(X 日)X 線画像所見:術前FTA186° /182°% MA2%術後FTA172° /182°% MA62.5%
【理学療法の介入方法】
DLO は二か所の骨切りを行うため侵襲範囲が広く、炎症や侵襲組織の修復過程により疼痛や癒着をきたすことが懸念される。それに加え、大腿部骨切り時に腸脛靭帯や外側広筋を侵襲していることやFTA の急激な改善で鵞足やMCLの伸張されることは膝関節ROM 制限因子となり得た。その為、炎症に対しクーリング指導、癒着予防や軟部組織の柔軟性改善を目的にストレッチ・軟部組織モビライゼーション・ROM 運動を実施した。また、脛骨長軸の延伸により腓腹筋が伸張され足関節背屈制限をきたしていることや下肢の相対的な位置の変化に対応しなければ跛行や矯正損失をきたす可能性を予測した。免荷期間の機能低下予防・ROM 拡大に加えて視覚フィードバックを用いた動作練習を行った。
【理学療法の評価】
・初期評価X+1 日→最終評価X+7 日炎症所見:右膝関節腫脹+→± 熱感+→±疼痛:運動時NRS7-10 → NRS0-1ROM-T:右膝関節屈曲45° P → 125° 伸展-5°→ -3° 右足関節背屈5°→ 10°MMT:右膝関節屈曲2 → 3 以上 伸展3 以上→ 3 以上周径:膝蓋骨上縁(0cm)52.0cm → 51.0cm (5cm)55.0cm → 53.0cm 下腿最大43.5cm → 42.0cm
【考察】
初期評価では術創部を中心とした疼痛が著明であったが、服薬・アイシング指導により疼痛コントロールは良好となった。DLO は大腿骨に対する生態学的安定性が低く、過度な膝関節可動域運動や荷重は矯正損失やヒンジ骨折の危険性がある。その為、関節可動域運動のハンドリングでは骨切り部への剪断・回旋ストレスに注意し、積極的な関節可動域運動より手術侵襲やアライメントの改善による影響を予測した介入を行うことで関節可動域の拡大を得ることできた。そして、急性期以降の円滑な荷重・歩行へ繋げることができたと考える。結果として、回復期リハビリテーション病棟へ転棟後も安静度に準じ良好な経過を辿り職場復帰へと繋がった。
【まとめ】
本症例の介入を通してDLO 術後急性期より手術侵襲やアライメントの改善による影響を予測し介入を行うことで疼痛軽減や関節可動域の拡大を得ることができ、急性期以降の良好な経過に繋がり重要であると感じた。そして、DLOへの理学療法介入の一助となると考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院の医の倫理審査委員会の承認を得て(第R-33 号)、患者に書面をもって同意を得た。