九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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自宅退院に難渋した高齢下肢切断患者に対する関わり
*宮田 拓也
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キーワード: 高齢者, 下肢切断, 自宅退院
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p. 131

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抄録

【はじめに】

今回、慢性閉塞性動脈硬化症を起因とした下腿切断患者を担当する機会を得た。症例は義足適応が無く、歩行から車椅子を中心とした生活様式への変更が必要であった。また、自宅は階段や段差が多く主たる介護者である娘の介護不安も聞かれた為、自宅退院は困難と考えられた。しかし訓練経過や退院前訪問の実施から、本人及び家族の中で自宅退院に対する強い希望が生まれ、自宅退院に向けて支援していくこととなった。ここにその経過と結果を報告する。

【症例紹介】

症例は90 歳代女性。X 年1 月下旬に症状の増悪にて当院へ入院。下肢虚血進行による骨露出が見られ、Fontane 分類:IVと下腿切断適応であり、2 月中旬頃に下腿切断術を施行された。整形外科Dr. より高齢かつ血管原性であることから義足適応なしと判断あり。キーパーソンの娘(60 歳代)と二人暮らし。本人の認知機能低下なし。

【経過・結果】

術後1 日目より理学療法介入。2 日目に起居・移乗動作、平行棒内歩行訓練を開始。5 日目には固定型歩行器や両松葉杖を用いた歩行訓練を実施した。しかし、歩行補助具を用いた歩行は不安定で実用性が低かった為、移乗動作や車椅子駆動訓練を中心に訓練を進めた。車椅子を用いた訓練の受け入れは良好で、14 日目で病棟内車椅子移動が導入できた。退院支援カンファレンスにて回復期病院や介護老人保健施設を経由し、最終的に本人の希望した自宅へ繋ぐよう調整を進めていた。事前に家屋環境の把握をしておくのが良いと考え退院前訪問を実施した。実際に訪問を行うと、屋外環境に階段(10 段)や屋内外に複数の段差が確認された。娘の介護不安の訴えも聞かれた為、施設入所が提案された。しかし、退院先を調整する過程で本人・娘の強い自宅退院への希望があった為、特に問題点となる(1)自立した車椅子生活の獲得(2)環境面の調整(3)車椅子やベッドからの転倒・転落時の床上動作獲得に焦点を当てた支援を行うことで自宅退院を目指すこととなった。(1)は、基本動作訓練・動作指導を継続した。指導したADL を自ら行うよう、病棟看護師と協力して導入し、35 日目に入浴動作以外のADL が自立となった。(2)は、屋内外段差はスロープによる段差解消にて車椅子移動が可能と思われた。屋外の10 段の階段(各18 ㎝)については、福祉用具として介助ベルトや、昇降式リフト、段差昇降型車椅子を提案した。介護力・金銭面・技術面を考慮し、今回は昇降式リフトを選択し導入した。(3)は資料を作成し確認しながら訓練を反復することで単独での動作が可能となった。上記の問題点の改善が図れたことで術後91 日目に自宅退院となった。後日、退院後訪問を実施した。車椅子での屋内生活は自立し、頻度は少ないがリフトを使用し娘との外出も行うことが出来ていた。娘の介護負担を軽減し、本人の希望に沿った充実した生活を送れていることを確認できた。

【まとめ】

今回、自宅退院が困難ではないかと感じた症例に対して、生活様式の変更・訪問・環境調整を経て本人・家族が望む自宅退院へ繋げることが出来た。家族の介護力、住環境や地域特性(坂道・段差の多さ)に対する問題は今後も経験する機会が多いと思われる。今後も経験を重ね、患者様の希望に寄り添った適切な関わりを継続していきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言を遵守し、本人・娘に本報告の趣旨を説明し同意を得た。なお、本報告は所属施設の倫理委員会の承認を得ている(承認番号2021-06)。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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