九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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人材マネジメントに着目した教育管理方法の試み
*豊増 達*松崎 秀隆
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p. 36

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抄録

【はじめに】

本邦における働き方改革とは「労働環境」と「生産性」の二つがバランスよく向上していくことを指す.そして,この条件を実現するため各部署の管理者には,法人理念に基づいた教育的指導,管理を計画的に実施することが求められる.しかし,現実には職員の多様なニーズ,新型コロナウイルス感染症やハラスメント対策、有給休暇取得など、考慮すべき課題は多く困難を極める.そこで今回,働き方改革の実現に向け,部署方針と個人目標の明確化に主眼を置いた,人材マネジメントを実施した.結果,意識改革に伴う職場環境の改善および収益に変化を認めるなど,教育,管理運営上の新たな知見を得たため,ここに報告する.

【対象】

当院リハビリテーション部に所属する理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の資格を有する保健医療従事者23 名(男性13 名,女性10 名,年齢34.58 ± 9.76歳,平均年齢±標準偏差)である.

【方法】

調査期間は2019 年4 月~ 2020 年12 月.部署の取り組みとして,期初に法人理念や行動指針,法人ビジョンを確認し,自身のミッションステートメントを具体的に紙面上に書き起こす作業を実施した.そして,3 か月に一度は目標を再確認する時間を設け,期初に記載した「いま」やらなければならないこと,「これから」やっていくことなど,ミッションステートメントの再確認,修正を行った.また,エンゲージメント12 項目評価表を用い,半年に一度,数値化を実施し,比較検討した.

【結果】

自主的に参加する勉強会やボランティアなどの件数は前年度比1.32 倍と積極的となり,部署収益も前年各同月比すべてにおいて増収となった.また,当法人として初めてとなる,筆頭演者での学会登録や資格取得者もいた.エンゲージメント評価では,実施前後の比較において平均1.8 点の向上を認めた.

【考察】

働き方改革との言葉も浸透し,多くの企業で人材マネジメントに取り組む動きは加速している.そこで今回,ミッションステートメント,エンゲージメント評価を用いて職員へ働きかける取り組みを行った.ミッションステートメントとは,ミッションは使命,ステートメントは声明・意見で,自身の使命を声明として発信するという意味を持つ.今回,紙面上に声明を記載することで,聴覚だけでなく視覚刺激も含めたフィードバックを定期的に実施した.一般的に法人理念や個人目標は日々の多忙な業務に追われ,見失うことも少なくない.そこで今回,定期的に自省を促したことが,継続した意識付けに繋がったと考えている.さらに,エンゲージメント評価を行い,職員一人ひとりの影響要因を可視化することで,最近接領域でアプローチできたとことも効果的であったと考えている.コロナ禍が拍車をかけ、働き方も多様化している「いま」だからこそ,職員が目標を見失わず,個人だけでなく,職員間でのコミュニケーションを密にし,業務に取り組める職場環境を作る支援体制の構築が管理者には求められる.そして,このような取り組みの継続が,個人パフォーマンスを高めるとともに,職員共有の価値観を生み出し,お互い信頼できる心理的環境を作る支援,管理運営に繋がると考える.

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者には,倫理面への配慮として任意性と同意撤回の自由について口頭および文章にて説明し,承諾を得て実施した.なお,本調査研究は,法人倫理審査委員会の承認(E2702)を得ており,開示すべき利益相反はない.

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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