九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
会議情報

離島での訪問型短期集中予防サービス事業立ち上げに関する活動報告
離島へき地に訪問して見えた現状と課題
*鉄川 幸介*本村 一道*江村 一帆*冨山 慎士*増田 恵
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p. 72

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抄録

【はじめに】

長崎県の離島である新上五島町では高齢化率が40%を超えており、地域在住高齢者に対するリハビリテーション専門職(以下:リハ職)の関わりが重要となっている。令和2 年度に新上五島町から依頼を受け、介護予防・日常生活支援総合事業である訪問型短期集中予防サービス(以下:訪問型サービスC)の立ち上げに携わった為、活動内容と見えてきた課題について報告する。

【事業内容】

新上五島町における訪問型サービスC の目的は、「心身の状況により通所事業への参加が困難で生活機能の低下が認められる者に対し、保健・医療専門職が居宅を訪問し、生活機能に関する問題点を総合的に把握評価し、適切な助言や指導を行うことで、心身機能の改善と社会参加を促進すること。」である。要支援者・総合事業対象者を対象とし、担当の介護支援専門員(以下:ケアマネ)からの情報を基に地域包括支援センターが対象者を選定した。期間は3か月を上限とし、1 回の活動時間は約120 分(運動指導・家屋調査:60 分、移動:60 分)で、それぞれのケースに応じて必要回数の訪問を行った。

【活動内容】

地域包括支援センターから当院にリハ職の派遣要請を受け、対象者のケース概要書を参考にリハ職5 名で対象者の振り分けを行った。事前準備として、各担当者による活動内容の違いが生じないよう、身体機能や生活環境の評価表を作成した。訪問指導時間は60 分と限られている為、移動時間を利用して担当ケアマネから詳細な情報収集を行った。到着後は対象者からの要望や生活環境などに関する聴取を行い、内容に応じて生活動作・自主運動の指導や生活環境に対する助言を行った。訪問後は、活動内容報告書を作成し、担当ケアマネや対象者と情報共有を行った。

【結果】

令和2年度、新上五島町における訪問型サービスC は7 月から12 月までで12 件行われた。平均訪問回数は3.17 回で平均移動時間は往復69.17 分を要した。毎回、担当ケアマネとリハ職で訪問を行い、必要に応じて福祉用具担当者や施工業者に同行を依頼した。対象者からの要望としては住環境に対する助言・調整、自主運動・生活動作指導を求めるものが多く、実際にリハ職による運動・生活動作指導や住環境整備を行った事で、利用者からは活動範囲が広がったとの声が聞かれた。

【考察】

新上五島町での訪問型サービスC 事業立ち上げ初年度で12 件の訪問を行い、平均訪問回数は3.17 回で、島の中心部から離れたへき地に住む対象者に訪問回数が多い傾向であった。その要因としては、へき地に住む高齢独居・高齢夫婦世帯の方々は交通の便や地形環境の理由で支援を受けられず、自らが工夫を凝らしてどうにか生活をしているケースが殆どであり、今回の訪問型サービスC でリハ職からの支援を受ける事で生活機能の向上が期待できた事が挙げられる。しかし、中には初回訪問時の評価にて住環境の状態や身体機能の低下が著しく訪問型サービスC での支援に難渋するケースも存在し、十分な医療・介護サービスを受けられない離島へき地在住高齢者に対しての支援体制の構築が課題として挙げられた。

【倫理的配慮,説明と同意】

今回の報告は倫理的配慮に注意し、個人のプライバシーが特定できる内容は記載していない。また、事業実施主体である新上五島町から発表に関する承諾を得ている。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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