九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: S-12
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セレクション2
肺切除術後運動時低酸素血症を呈する症例の臨床的特徴
呉屋 太造高良 奈津子名嘉 太郎古堅 智則照屋 孝夫古川 浩二郎大屋 祐輔
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抄録

【はじめに】

肺切除術後に運動時低酸素血症(exercise-induced oxygen desaturation:EID)を呈した症例は15.4 ~19%と報告されており、術後早期のQOL 低下を招く恐れがあることから術後評価指標として重要であると推察される。しかしながら、肺切除術後EID に関する報告は少なく術後にEID を呈する症例の臨床的特徴は不明瞭である。本研究の目的は、肺切除術後に実施した6 分間歩行負荷試験(6-minutes walk test: 6MWT)にて抽出されたEID症例の臨床的特徴を明らかにすることである。

【対象・方法】

2017 年10 月~2020 年4 月に琉球大学病院にて腫瘍性肺疾患に対し予定肺切除術を施行した症例のうち6MWT 未測定例、試験中のSpO2 の測定が不安定な症例、酸素吸入を要する症例を除外し解析対象とした。6MWT 前と試験中のSpO2 との最大変化点をΔSpO2 とし、ΔSpO2 が4%以上低下した場合をEID ありと定義した。調査項目は患者背景、術中所見、呼吸機能検査、術前の身体機能、術後経過とし後方視的に調査した。統計解析はEID あり群とEID なし群に分け群間比較を行なった。連続変数に関してStudent のt 検定、またはWilcoxon の順位検定を用いた。名義変数に関してカイ二乗検定もしくはFisher の正確確率検定を用いた。単変量解析にて有意差を認めた項目のうち、多重共線性および臨床的有意性を考慮し選択した変数を説明変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。また多変量解析にて有意と検出された変数に対し、ROC 曲線にてAUC を求め、Youden index にてカットオフ値を算出した。すべての解析はJMPpro15.0.0 を用いp<0.05 を統計学的に有意とみなした。

【結果】

解析対象は82 例でEID あり群33 例(40.2%)、66(9.6)歳[平均(標準偏差)]、ΔSpO2 -6.9(3.3)%、EID なし群49 例(59.8%)、61.7(14.1)歳、ΔSpO2 -2.3(1.1)% であった。EID あり群はEID なし群と比較し、女性に多く(57.6%vs. 30.6%, p=0.02)、術前FEV1.0 が低値で(1.97Lvs.2.54L, p=0.001)、術後胸腔ドレーン留置期間が長かった(2.9 日vs. 2.4 日,p=0.03)。EID を目的変数、女性、術前FEV1.0、術後胸腔ドレーン留置期間、術式を説明変数とした多重ロジスティック回帰分析より、EID あり群には術前FEV1.0(OR; 0.29, 95%CI; 0.1-0.72, p=0.006)が独立した関連因子として抽出された。術前FEV1.0 のカットオフ値は2.09L(AUC; 0.71,p=0.001)であった。

【結論】

本研究では術後EID を呈する症例の臨床的特徴は女性で、術前FEV1.0が低値であり、術後経過として胸腔ドレーン抜去が遅延していることが示唆された。また術前FEV1.0 が術後EID と関連する因子として抽出されカットオフ値は2.09L であった。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、琉球大学の人を対象とする生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認を得て実施された【承認番号:1922】。また、「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施した。研究方法や同意文書の開示はオプトアウトにて実施した。

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© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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