九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: P-54
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ポスター9
HFNC を使用したCOVID-19 中等症Ⅱ患者への介入経験
江上 滉祐萬代 陽介
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キーワード: COVID-19, 酸素療法, 運動療法
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抄録

【はじめに】

High-flow nasal cannula(以下,HFNC)を使用したCOVID-19 中等症Ⅱ患者に対しての理学療法の経過報告を行う.

【症例】

72 歳男性,身長178cm,体重93.6kg,BMI:29.5,病前ADL 自立.飲食店経営.既往歴:肝硬変,2 型糖尿病,高血圧症.

咽頭痛,鼻汁,全身倦怠感を発症.発症6 日より呼吸苦あり.発症9 日にCOVID-19 陽性の診断.発症13 日,呼吸苦増強し救急要請.入院となる.入院時SpO2:95%(O2:5L)胸部CT では気腫性変化と,両肺野末梢優位にすりガラス様の間質性浸潤影を認めた.

介入は当院感染対策室の指示のもと,アイソレーションガウン,フェイスシールド,グローブ,N95 マスク装着にて,1 日1 回,集中治療の開始基準,中止基準を参考にコンディショニング,基本動作練習を中心に2 単位実施した.

【経過】

発症15 日,O2:8L にてSpO2:97%.デキサメタゾン,腹臥位療法開始.発症16 日HFNC 開始.発症17 日,理学療法介入開始.HFNC FiO2:0.7Flow:40L 安静時SpO2:98%.呼吸数:20 回/min.ポータブルトイレ移乗にて80%台へ低下認めており,ベッド上でコンディショニング目的にストレッチを実施.発症19 日,FiO2:0.9 デキサメタゾン増量,レムデシビル開始.発症21 日,尿道カテーテル留置.バリシチニブ開始.発症22 日,FiO2:0.9 端座位中はSpO2:97%.腹臥位中はSpO2:98-99%.会話や起居動作,起立でSpO2:90%以下まで低下認めた.発症24 日,FiO2:0.7へ減量.起立,立位足踏み運動を労作時のSpO2 が90%以下とならない範囲で行った.発症31 日,FiO2:0.45 Flow:30L.FiO2 が0.6 以下となったことを確認し短距離歩行開始.発症33 日,HFNC 離脱.歩行はO2:10L/min より開始.SpO2 のモニタリングを行いながら,SpO2:90%以下とならない範囲で酸素投与量の漸減を行った.発症34 日,運動療法2 回/ 日(4 単位)へ増量.尿道カテーテル抜去.O2:10L にて10m 歩行後SpO2:91%で経過.発症35 日,O2:10L にて20m 歩行後SpO2:88%と低下認めた.発症37 日,O2:10L にて30m 歩行後SpO2:91%で経過.発症39 日、O2:10L での歩行にてSpO2 低下みられなくなり,O2:6L へ減量し評価を行った.30m 歩行後,SpO2 は90%以上を維持できていた.発症41 日,O2:4L へ減量.40m 歩行後SpO2:91%で経過.発症42 日,一般病棟へ転室.発症43 日,120m 連続歩行可能.発症48 日,360m 連続歩行,階段昇降が可能となり,リハビリテーション継続目的に自宅近医へ転院となった.

【結果】

発症45 日,SpO2:98%(O2:4L/min).自室内ADL 自立.体重83.6kg.BMI26.9.修正MRC 息切れスケール3.6 分間歩行テスト316m.(4 分経過時点でSpO2:92%. 呼吸困難感により中断し,残り2 分は休憩)膝伸展筋力体重比右:0.26kgf/kg,左:0.27kgf/kg.

発症11 ヶ月経過後,電話による退院後調査にて,在宅酸素療法は終了し,安静時SpO2:98%.体重:97kg.ADL は自立しており,20 分連続歩行可能.勤務形態の調整を行い復職している.自覚症状は,頭痛,易疲労性,筋力低下などが継続しているとの訴えが聴取された.

【考察】

呼吸状態を確認しながら集中治療領域の開始基準,中止基準を参考にして,慎重に負荷量を漸増した. 労作時の呼吸困難感などの自覚症状は乏しく,SpO2 値に注意を払う必要があった.

また,1 年近く遷延する後遺症に対して運動療法の効果に関しての報告は少なく,本症例において、運動療法継続が効果的なのかを検証する必要がある.

【倫理的配慮,説明と同意】

患者に対しヘルシンキ宣言に基づき説明を行い、書面を用いて同意を得た.また,患者の個人情報が特定されないように十分配慮を行った.

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