九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: O-07
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口述2
運動療法を実施した急性白血病患者における寛解導入療法と地固め療法による身体機能、倦怠感変化の違い
中島 徳久武清 孝弘浜田 香穂麗堂園 浩一朗
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キーワード: 白血病, 化学療法, 運動療法
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抄録

【はじめに】

がん患者に対するリハビリテーション治療は、二次的な機能障害を予防し運動機能の低下や生活機能の低下予防・改善を目的とする。造血器腫瘍患者へのリハビリテーションに関する報告は、造血幹細胞移植の報告が多く、化学療法前後の効果を報告したものは少ない。今回、運動療法を実施した急性白血病患者を対象に、寛解導入療法目的入院(以下、寛解導入)中と地固め療法目的入院(以下、地固め)中の身体機能、倦怠感の変化の違いについて後方視的に検討した。

【方法】

対象は、2019 年7 月から2021 年8 月に当院で寛解導入と地固め中に運動療法を実施した急性白血病患者で、理学療法開始時( 以下、開始時) と退院時に理学療法評価が行えた患者22 例である。運動療法は、ストレッチ、筋力トレーニング、有酸素運動等を1 回20-40 分、週5-6 日実施した。評価は握力、Barthel Index( 以下、BI)、Performance Status( 以下、PS)、Cancer Fatigue Scale( 以下、CFS) をとした。統計解析は寛解導入時と地固め時における身体機能、倦怠感の違いについて、対応のある二元配置分散分析を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。

【結果】

対象の内訳は、男性10 例、女性12 例、平均年齢48.8 ± 20.7 歳であった。疾患は、急性骨髄性白血病13 例、急性前骨髄性白血病3 例、急性リンパ性白血病6 例であった。入院期間の平均は寛解導入40.2 ± 14.9 日、地固め31.1 ± 10.6 日であった。

治療前後の身体機能の変化は寛解導入- 地固め、開始時- 退院時の順に、握力は26.9-23.7kg(P <0.01)、25.0-24.8kg(P=0.72)、BI は94.3-97.0 点(P <0.01)、96.1-97.0 点(P =0.30)、PS は1.0-1.1(P =0.56)、0.9-0.8(P =0.24)、CFS は17.7-14.6 点(P =0.05)、14.6-14.6 点(P =0.97)と寛解導入時に握力が有意に低下し、BI は有意に改善したが、地固め時は全ての項目において有意な変化は無く維持できていた。分散分析による検討では、握力(P <0.01)において有意な交互作用を認め、寛解導入時が地固め時より低下した。

【考察】

今回の検討では、寛解導入時の握力を除く他の評価項目において、退院時に維持・改善されており、運動療法による一定の効果があったのではないかと考えられた。寛解導入にて入院期間が長くなったことが、握力低下が大きい傾向にあった一因だと考えられ、入院が長期化する寛解導入時の筋力低下予防は、特に重要であると思われた。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、ヘルシンキ宣言、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に準じて実施し、当院倫理委員会の承認を得て行った。(承認番号:NCR22-6)。

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© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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