九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: O-45
会議情報

口述8
足関節捻挫後の主観的不安定感と動的バランス能力の関係
恒松 奈菜子久保 智生池田 竜也廣瀬 幸太綱 翔太郎松澤 雄太西山 和宏福永 誠司藤元 勇一郎
著者情報
キーワード: 足関節捻挫, CAIT, バランス
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】

足関節捻挫はスポーツ活動において最も発生頻度の高い外傷とされている。また, 高い再発率や合併症を生じ早期のスポーツ復帰を妨げ, 後遺症として慢性足関節不安定症( 以下CAI) に移行するとされている。CAI では種々の機能のほか, 構造的な不安定性, 主観的な不安定感, さらにはパフォーマンスに対する適切な評価が必要とされている。足関節捻挫後の機能障害に対する評価や構造的不安定性の評価を用いた報告は多いが、主観的不安定感の評価を用いた報告は少ない。また、主観的不安定感は, 動的バランス等のパフォーマンスに影響を及ぼすと考えられるが、両者の関連性を調べた報告も少ない。本研究の目的は, 足関節捻挫後の主観的不安定感と動的バランス能力の関係を明らかにすることとした。

【対象と方法】

対象は, 過去に1 回以上の足関節捻挫の既往があり, 初回受傷が計測時点より12 カ月以上前である13 名(年齢26.1 ± 2.7 歳男性6 名, 女性7 名)とした。なお, 下肢に筋骨格系の手術既往を有する者や過去3 カ月以内に下肢に筋骨格系の急性外傷(捻挫・骨折など)があった者, 両側受傷の者は除外とした。主観的不安定感の評価として,Cumberland Ankle Instability Tool 日本語版のスコア( 以下CAIT) を用いた。また、動的バランス能力の評価として、Y バランステスト( 以下YBT) 前方, 後内方, 後外方を計測した。なお,YBT は軸足を計測足とした。統計解析は, 相関分析を用いて、患側のCAIT とYBT の各方向との関連性を分析した。統計学的検定にはR-4.0.2 を用い, 有意水準は5%とした。

【結果】

それぞれの測定結果(健側/ 患側)より,CAIT は26.4 ± 2.6/21.8 ± 4.5点,YBT 前方は103.7 ± 53.4/79.5 ± 20.1㎝, 後内方は91.5 ± 12.2/87.5± 12.3㎝後外方は88.1 ± 13.9/74.9 ± 12.2㎝であった。相関分析の結果より, 患側CAIT とYBT 前方(r = 0.66,p < 0.05),YBT 後内方(r = 0.65,p < 0.05)に有意な正の相関を認めた。一方, 患側CAIT とYBT 後外方(r = -0.29,p = 0.33)には有意な相関は認めなかった。

【考察】

本研究の結果より, 足関節捻挫後の主観的不安定感は前方および後内方へのバランス能力と関連することが示された。先行研究において主観的不安感のある者は健常者と比較し, 前方へのバランス能力が低下することが報告されている。本研究の結果も先行研究を支持するものであり,CAIT による主観的不安感の評価がバランス能力を反映する可能性が示唆された。今後は症例数を増やし, 足関節可動域や足底背屈筋力の影響等を考慮していく必要がある。

【倫理的配慮, 説明と同意】

本研究は当院倫理審査委員会にて承認(承認番号018)を得て,ヘルシンキ宣言,及び人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき個人情報保護のため得られたデータは個人情報が特定できないよう十分配慮し管理した。

著者関連情報
© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top