九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
会議情報

一般演題18[ 教育・管理運営① ]
AIと筋骨格シミュレーションモデルを用いた動作分析:新しい学校教育の形
O-100 教育・管理運営①
河上 淳一時任 真幸烏山 昌起
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キーワード: 動作分析, AI, 教育
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p. 100-

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抄録

【背景と目的】 理学療法士は動作の専門家である。動作とは、各体節の空間的位置の時間的変化を示す運動学と原因となる運動力学が合わさった運動により達成された結果である。動作の中では、視覚で理解できる運動学が理解し易すく、視覚化できない運動力学の理解が難しい。学校教育では机上で教科書にて運動学や運動力学を学ぶ。実際の計測機器の使用は3次元動作解析器、床反力や筋電図を使用することになるが、運動学と運動力学の詳細データが得られる反面、時間的・経済的・空間的なコストが高い。教育現場で抱える問題としては、全学生が経験できない、限定された計測環境のみしか計測が困難、深部筋の計測に侵襲を伴うなどがあげられる。そこで、我々は、場所を選ばず、簡便な方法で動作を撮影し、その結果から運動力学的データを導き出す方法を共同開発・実践し、教育に活かしている。本報告では、我々が行う教育方法の実践方法を紹介し、同じ悩みを抱える教育者に対して解決方法の可能性を提示することである。

【解析方法】 動作はスマートフォンで撮影する。撮影されたデータ(mp4形式)はWebサービスのPlaskに取り込むことで、2次元データから3次元データに構築(BVHファイル形式)し、運動学的データを生成する。次に運動学的データを筋骨格シミュレーションモデルであるAnyBody Modeling System ver. 7.4(AnyBody Technology A/S, Aalborg, Denmark)に取り込み、逆動力学解析にて運動力学的データを推定する。運動力学的データには、深部筋を含む筋活動、関節間力・腱張力や各関節のモーメントなども算出される。動画の撮影から全ての解析を終えるまでの時間は概ね10-15分程度である。

【教育方法】 演者らは授業の一貫として、学生の立ち上がり動作(または投球動作など学生が感心を寄せる動作)などを撮影・解析し、学生に運動学と運動力学的情報を教示している。学生には、複数回動作を変化させ、再解析することで、運動力学的データが変わることを経験させている。更に、運動の変化により、どの筋活動が変わるかなどの推論的な方法で学生に学ぶ機会を提供している。

【教育の経過と課題】 動作分析の報告は、3次元動作解析や筋電図などが散見される。近年では、Point Cluster Techniqueや2D-3D Registrationによって、詳細な骨動態の観察も報告されている。本方法の精度は2次元データから3次元データを構築しているために、従来の動作解析装置に劣る。しかし、本方法の強みは、様々な動作を簡便に撮影し、場所を選ばず、短時間で解析ができるため、時間的・経済的・空間的なコストが従来の動作解析よりも圧倒的に低いことである。さらに、生体計測と異なり、侵襲を伴わず深部筋の筋活動も推定できる。本報告における教育のモチベーションは、定性的な動作解析データを提示することで、学生自らが経験し、運動による変化を感じながら考えさせることである。本手法を応用し解析の精度を高めていけば、学生の考える力を引き出し、動作の専門家になるための学生教育の一助になると考えている。

【倫理的配慮】 本報告は教育の実践報告であり個人情報を取り扱っていない。

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© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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