九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題20[ 基礎 ]
超音波計測による高齢者の筋厚・筋輝度・筋硬度と 筋力・RFD の関係
O-114 基礎
高野 吉朗下田 武良松田 憲亮
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キーワード: 超音波計測, 筋輝度, RFD
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p. 114-

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抄録

【目的】 高齢者は、加齢に伴い骨格筋量が減少し筋力も比例して低下する。しかしながら、筋量減少が認められないにも関わらず、筋力が低下する高齢者も少なくなく、それらは筋実質が脂肪組織に置換されることで、筋力が発揮されないことが先行研究で明らかになっている。したがって、骨格筋の機能評価は、筋厚などの量的評価のみならず、脂肪細胞の増加や結合組織の変化を捉える筋輝度などの質的評価も重要となる。近年、それらを計測する超音波計測が臨床において普及しているが、高齢者における筋力や立ち上がり率であるRate of force development(以下、RFD)に及ぼすかは明らかになっていない。本研究では、高齢者の大腿直筋を超音波診断装置で計測し、骨格筋の質的変化が筋力等と関係があるかを検証した。

【方法】 対象は地域在住高齢者18名(男性10名、女性9名)、平均年齢64.3±3.1歳であった。除外基準は、下肢に整形外科疾患の既往を有する者、活動性の高い運動を日常的に継続している者とした。骨格筋の機能評価として、大腿直筋の筋厚、筋輝度、筋硬度、羽状角を、超音波診断装置(LOGIQ S8, GE社製)とリニアプローブ(GE社製)を用いて計測した。計測は超音波検査師1名が担当し、事前に信頼性を確保するため級内相関係数にて、ICC≧0.81を確認した。撮影された画像は、画像解析ソフトImage J(N IH)を用いて解析した。筋力評価は、膝伸展筋力、RFD(100・200)および大腿直筋の筋電図を計測した。膝伸展筋力は、Biodex System 4(Biodex社製)を用い、膝伸展等尺性運動の最大トルクを計測した。RFDは膝伸展筋力の出力時をゼロとして、0-100・100-200ms時におけるトルク値を時間で除して算出した。筋電図はEMGマスターKm-104(メディエリアサポート社製)を使用し、膝伸展筋力測定中の大腿直筋の活動電位を計測した。サンプリング周波数は1k㎐とし、最大随意収縮5秒間のうち中央3秒間の積分値を算出した。統計解析は、1)骨格筋機能と筋力(最大トルク・RFD・筋電図)との関係性について、Spearman検定を用いた。2)性差の比較について、Mann-WhitneyのUの検定を用いた。SPSS ver27を用いて有意水準を5%とした。

【結果】

1)筋輝度において、膝伸展筋力(相関係数:-0.864)、筋電図(-0.562)、RFD100(-0.506)、RFD200(-0.527)に有意な関係性を認めた。

2)性差の比較では、女性の筋輝度に有意に高かった(女性:112.4 vs 男性:64.6 a. u. )。男性は膝伸展筋力、筋電図、RFD100, RFD200において有意に高かった。

【まとめ】 高齢者の筋輝度が筋力と関係性を認めたことで、筋厚の量的変化より質的変化が重要であることが明らかになった。加齢による筋輝度上昇は、選択的に速筋線維が萎縮し、筋細胞間隙部位に脂肪組織や線維組織が蓄積することが原因であることが知られている。今回の結果から、最大筋力や瞬発力を示すRFDで必要な速筋線維の萎縮と非収縮組織である筋輝度に関係が強いと考えられる。性差の比較では、筋輝度が女性に有意に高かった。その他の検査項目では男性が有意に高いため、女性においては骨格筋の量的評価より質的評価がより重要であることが明らかになった。これらから、超音波計測を用いた質的評価は、高齢者の骨格筋機能を捉える上で重要と考えられる。

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