主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 155-
【活動の背景と目的】 障害者施設等一般病棟にて新型コロナウィルス感染症クラスター発生による病棟隔離を2回(第1期令和4年8-9月および第2期12月-令和5年1月)経験した。今回、第1期の振り返りを活かし、第2期で病棟業務支援を行いながらリハビリテーション業務(以下、リハビリ)の早期介入が行えたため活動報告する。
【病棟の規模や患者情報】 入院患者は第1期37名~第2期43名と入退院での変動あり。今回、第1期および第2期ともに病棟に在籍したリハ処方患者29名:平均年齢74.9±13.7歳(パーキンソン病48% 脳血管疾患等17% 脊髄小脳変性症10% 脊髄損傷10% 脳性麻痺3% その他:9%)を対象とする。
【活動内容および経過】
第1期:クラスター発生、感染拡大は急速であった。患者離床未実施。
〈感染拡大時期〉病棟スタッフ人員不足により療法士もオムツ交換や食事介助などの病棟業務を優先するため、リハビリ実施困難であった。能力維持目的にて、プリント配布等での自主訓練指導や、隔離による環境変化に応じて環境調整等実施した。
病棟隔離開始14日後リハビリ再開、①病棟スケジュールの把握を行い、療法士間の役割分担を明確化することで業務の円滑化を図った(リハビリ時間の確保)。また、②スタッフ全員での感染対策を共有した。③リハビリ実施にて接触する機会が増えるためPPEの着脱を学習した。病棟隔離中リハ再開後の患者介入単位は1日平均1.53単位→0.63単位へ低下。感染拡大前と比較すると患者の運動FIM平均27.4点→25.7点へ低下(有意差ありP<0.01)。
〈病棟隔離解除後〉クラスター発生前と比較すると筋力・耐久性・認知面の低下を呈し、療法士間で情報共有しながら訓練実施することで能力改善に努めた。
感染予防対策マニュアルは随時更新され、業務効率化された。今後同様な状況が起きた際にも対応できるようにした。
第2期:クラスター発生も感染者の拡大は緩やかであった。患者離床継続。
〈感染拡大時期〉病棟業務の手伝いとともに病棟隔離初日よりリハビリ介入 ①初期から病棟スタッフおよび療法士のPPE着脱の的確な実施。②感染下における病棟業務およびリハビリの早期分業。③動線の工夫(ベランダを利用した病室間移動でPPE着脱回数減少) ④陽性者への早期介入(離床、食事介助、ベッド周囲環境整備など)実施した。感染拡大前との比較し、病棟隔離中の患者介入単位は1日平均1.74単位→1.86単位と維持。患者の運動FIMも平均27.4点→26.03点(有意差無)とほぼ維持することができた。
【考察】 第1期:FIM低下は病棟隔離対応によって移動範囲が縮小、制限されたため、歩行や移乗動作での点数低下がみられ、車椅子離床し食事摂取出来ていた患者がベッド上では自己摂取困難となり、食事介助量増大したためと考える。第2期では、①PPEの的確な着脱実施。②病棟業務とリハビリの早期分業。③PPE着脱回数減少などにより病棟スタッフおよび療法士の動きが効率化された。このため、早期介入実施できた。リハビリ介入による移動能力維持、病棟との協力による食事の際の離床実施等によりFIM維持できたと考える。
【まとめ】 初回の病棟隔離の経験により、2回目の病棟隔離時、感染拡大予防のための対策とともに早期からのリハビリ介入を行えた。
病棟隔離早期からの介入により病棟での患者の離床やADLを維持することができた。
今後、感染症などによる病棟閉鎖が起きた際には、感染予防対策をとりながら、リハビリ介入を継続していきたい。
【倫理的配慮、利益相反】 本報告はヘルシンキ宣言を遵守し個人情報の取り扱いに配慮した。なお利益相反に関する開示事項はない。