主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 154-
【目的】 2010年度より大牟田市において高齢者の介護予防対策として、「よかば~い体操巡回教室」を実施しており、この教室を実施した参加者は既に延べ78,348名に達した。今回、新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置のために、外出頻度が少なくなり、教室での体操を休止しなければならず、多くの住民が引きこもりを増やす結果となった。その打開策として「よかば~い体操巡回教室」のプログラムを動画制作にして、地域住民、介護施設に配布した。また定期的に感染症対策を行いながら体操巡回教室も継続した。
本研究の目的は、新型コロナウィルス禍において、体操巡回教室と運動動画視聴によるハイブリッドによる運動指導の効果を検討することである。
【方法】 対象は、新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置解除後に「よかば~い体操巡回教室」に参加し、2021年11月以降の体力測定(以下、再開時)とその6~8ヶ月後に行われた体力測定(以下、実施後)が実施できた207名、78.9±6.1歳(女性192名、79.0±6.0歳、男性15名、77.9±7.4歳)とした。
「よかば~い体操巡回教室」のプログラムは、姿勢の維持改善を目的に大腿四頭筋、大殿筋、腹筋群、菱形筋の筋機能向上トレーニングと膝関節屈筋群、腸腰筋、大小胸筋のストレッチならびにニーベントウォーキング等の機能的トレーニングを実施した。実施方法は、大牟田市より指導員を月に1回派遣し体操を実施した。また団体によっては自主的に月に約1~2回体操を実施した。また、そのプログラムの動画制作を行い参加全員に配布し自宅で実施するように促した。体力測定項目は、握力、長座位体前屈、片脚立位時間、最大歩行速度、ファンクショナルリーチ(FR)、Time up and go(TUG)とした。統計解析はSPSS Ver. 28(IBM社製)を用い、データの正規性を確認後、Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて2群間の比較を行った。なお、有意水準は5%とした。
【結果】 2群間の比較は、FR、TUG、握力(右)、握力(左)がp<0.01となり有意な改善が認められた。平均値(再開時/実施後)は、FRが34.1±6.0 ㎝/35.0±5.1 ㎝、TUGが5.5±1.2秒/5.3±1.1秒、握力(右)が22.0±4.8 ㎏/22.8±4.8 ㎏、握力(左)が20.8±4.4 ㎏/22.0±5.1 ㎏であった。長座位体前屈はp=0.868で有意差は認められなかった。その平均値は35.1±7.8 ㎝/35.0±8.4 ㎝であった。片脚立位時間は最大時間を60秒と設定したこと、最大歩行時間は実施環境の影響により比較することが不可能であった。
【考察】 本研究では、緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置の期間の対象者の外出頻度が低下し身体機能が低下している状況で教室および自宅における運動により身体機能が改善したことが示唆された。特にTUGの運動要素の敏捷性・平衡性の向上が図られたことは行動スピードが向上し日常生活の大きく関与するものと考えた。今後の取り組みとして、教室の参加者が男性7%であり、このような教室への参加を促す手段を検討していかなければならないこと。再開後の身体機能との比較を検討すること、動画視聴時間を含めた総運動量の把握など、調査しなければならないことを今後の課題とした。
【まとめ】 新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置のために、外出頻度が少なくなった高齢者がハイブリッド方式による「よかば~い体操巡回教室」に参加することにより身体機能が向上することが示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は本学の研究倫理審査委員会(承認番号:帝福倫23-04)の承認を受けて実施した。対象者に本研究内容を書面にて説明し、同意を得た。