主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 172-
【目的】 当院では、運動器疾患を有した地域在住高齢者に対して短時間通所リハを提供している。これまでの通所リハの効果に関する研究では、身体運動機能の維持・向上や生活空間の拡大効果など一定の効果が認められることが報告されている。しかし、通所リハが日々の活動パターンに及ぼす影響に関してはよく分かっていない。そこで、本研究の目的は、通所リハが運動器疾患を有した地域在住後期高齢者の1年後の身体運動機能や1日の活動パターン、介護度改善にどのような影響を及ぼすのか調査することとした。
【方法】 2019年から2021年までに当院通所リハの利用者は87名であった。利用開始時に活動量の計測が実施できた27名の中で、神経筋疾患を有した利用者や1年後に活動量の計測ができなかった利用者を除外した11名(男性2名、女性9名、81.3±4.9歳、要支援1:3名、要支援2:6名、要介護1:2名)のデータを解析した。利用開始時と1年後に活動量、身体機能、抑うつ状態について評価した。活動量の計測には3次元加速度センサ(OMRON社製、Active style pro HJA-750C)を用い、利用者には1週間装着するよう指示し、8時間/日以上装着していたデータを解析に用いた。活動量の解析の指標として歩数、歩行EX、生活EXに着目した。EXとは身体活動の強さと量を表す単位で、身体運動強度(METs)と活動時間の積で表される。今回3METs以上6METs未満のEXを分析した。身体機能は握力、30秒椅子立ち上がり回数(CS-30)、開眼片脚立位時間、2ステップテスト、Timed up and go test(TUG)を評価した。抑うつ評価として老年期うつ評価尺度(GDS15)を使用した。利用者は週に1~2回、2時間/回、個別リハを中心に物理療法、マシントレーニングを1年間実施した。統計学的検定にはGraphPad Prismを用いて、対応あるt検定またはWilcoxonの符号付順位検定を行い、有意水準は5%とした。
【結果】 1日の平均歩数は、利用開始時(1,391歩/日)と比較して1年後(1,820歩/日)に有意に増加していた。1日の時間別平均歩数は12時を境に午前と午後にピークを迎える2峰性の変化を示し、利用開始時と比較して1年後には午前(am7:00~10:00)と午後(pm15:00~18:00)の歩数が大きく増加していた。1日の時間別平均EXは、歩数変化と同様なパターンを示した。1日の時間別平均生活EXは、開始時と比較してam9:00からpm15:00の間で減少していた。運動機能評価は1年後に有意な改善は認められなかった。うつ評価の指標であるGDS15に関して、有意な改善は認められなかったが、開始時(中央値:8点)と比較して1年後(中央値:3点)に減少していた。介護度に関して、18%(2名)が改善を示し、64%(7名)の利用者は介護度に変化がなかった。
【考察】 本研究は、1年間の通所リハが運動器疾患を有した地域在住後期高齢者の1日の歩行活動パターンを向上させ、運動機能維持や介護度維持・改善に効果が期待できることを示唆した。その要因として、生活活動から歩行活動への1日の活動パターンの変換が起こったと考えられる。また、通所リハに参加することにより運動や外出の機会といった社会参加を促進し、抑うつ状態が改善したことが活動パターンの変化に繋がった可能性がある。通所リハ利用者の日々の活動量向上には、身体機能のみならず精神的な改善も重要となることが示唆された。
【まとめ】 1年間の通所リハは運動器疾患を有した地域在住後期高齢者の歩行活動を向上させ、日々の活動パターンに影響を及ぼすことが示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に基づき、鹿児島大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(No180050)。対象者には十分説明を行い、同意を得た。