九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題31[ 地域リハビリテーション② ]
「生活介護」におけるリハビリテーションの役割
O-178 地域リハビリテーション②
長谷場 純仁田中 伸明
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p. 178-

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抄録

【はじめに】 障害者福祉における通所型サービスのひとつに「生活介護」があるが、我々の施設では、「生活介護」の利用者のうち必要な方に対し、リハビリテーション実施計画書を作成して個別の機能訓練を行っている。「生活介護」の利用者およびその家族のリハビリテーション(以下、リハ)に対するデマンドや実施内容を調査し、当施設の「生活介護」におけるリハに求められている役割について検討したので報告する。

【対象と方法】 対象は、2022年9月から11月の3か月間において当施設の「生活介護」を利用された身体・知的・精神障害を有する58名のうち、リハ実施計画書に基づき個別の機能訓練を実施した29名(男性11名、女性18名、年齢35.4±12.1(範囲:20-62)歳;平均±標準偏差)。対象は施設周辺の鹿児島県霧島市および姶良市に居住し、また、障害の原因となる主な疾患は、脳性麻痺15名、脊髄損傷3名、脳疾患4名、神経筋疾患4名、その他の先天性遺伝子疾患が3名であった。主な障害は、四肢麻痺13名、両麻痺7名、対麻痺1名、片麻痺2名、運動失調症1名、全身性の筋力低下5名で、その他の重複障害として側弯症や強度の関節拘縮および変形5名、呼吸障害2名、失語症5名が認められた。対象のADLはBarthel Indexで25.2±27.9点で、0点が11名、5-20点が5名、25-55点が8名、60点以上が5名でそのうち80点が1名であった。

 調査方法は、対象のリハの頻度、当施設のリハに対する本人および家族のデマンド、実施されたリハの内容について、リハ会議録やリハ実施記録等より後方視的に調査された。

 なお、この研究は社内の倫理委員会により承認され(承認番号23-1-1)、全ての利用者や家族に対し広報誌を通じて告知を行い実施された。

【結果】 対象の当施設での個別機能訓練の頻度は、7.0±2.4回/月で、4回/月が8名、5-7回/月が3名、8回/月が14名、それ以上が4名いた。当施設以外での個別機能訓練の頻度は、2.6±2.9回/月で、0回/月が11名、1回/月が5名、3-4回/月が7名、5回以上が6名いた。当施設外でリハを受けている場所は、病院が8名、通所施設(生活介護)が7名、訪問リハが6名であった。

 対象やその家族の当施設におけるリハへの主なデマンドは関節拘縮や変形・側弯の進行予防が23名、基本動作の維持および向上が21名、疼痛緩和が8名、筋力の維持・向上が6名、筋緊張のコントロールが5名、呼吸機能の維持が3名、自宅での介助量の軽減が1名、体重のコントロールが1名いた。

 リハの内容は、ストレッチングや関節可動域運動が28名、基本動作練習が22名、歩行練習が11名、筋力増強訓練が9名、促通訓練7名、リラクゼーションが9名、立位台での立位が2名、その他に家族や職員への介助およびADLの指導や自主練習指導などが実施されていた。

【考察】 今回の調査から、対象の半数以上が他施設や病院等でのリハの頻度は1回/月以下であり、当施設でのリハの回数が病院や他施設よりも多く、また、対象および家族によるデマンドから、当施設のリハに病院等で実施されるリハと同等の内容が求められていた。これらより当施設の「生活介護」で行われるリハは、身体機能の維持・向上を中心に、施設や家庭での介護や日常生活の場面に生かされることを目的としての役割を求められており、そのためにも、利用者やその家族はもちろんのこと、関わり合う様々な職種のスタッフや関連する施設・病院と密に連携し、リハを取り組んでいく必要があると考えられた。

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© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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