九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題31[ 地域リハビリテーション② ]
熊本県運動器機能評価の取り組み推進に向けた活動報告
O-182 地域リハビリテーション②
北尾 昌平
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p. 182-

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抄録

【目的】 熊本県では、平成24年より「運動器機能評価システム(以下、本システム)」を活用し、県下全体から高齢者の運動器機能評価に関するデータの収集・分析をしている。令和2年度より、本事業の実施主体である熊本県地域リハビリテーション支援センター(以下、県リハセンター)と、そこに関係者の数名を加えたワーキンググループ(以下、WG)により、事業運営についての課題に対する検討・対策を行ってきた。今回、熊本県の運動器機能評価事業(以下、本事業)における、現状と今後の課題、それに伴うWGでの活動経過を報告する。

【倫理的配慮、説明と同意】 各施策事業の一環で評価を実施しており、熊本県及び県リハセンターの同意、承認を得て活動記録の活用を行った。

【これまでの現状と課題】 熊本県には、熊本県医師会にて県リハセンターの事業が実施され、地域リハビリテーション広域支援センター(以下、広域リハセンター)、地域密着リハビリテーションセンターの三層構造によるリハビリテーション支援体制がある。この体制の中で市町村・地域包括支援センターや事業所といった本システム利用者(以下、利用者)とも協力し、運動器機能評価のデータを収集してきた。ただデータ収集の方法、データの活用方法などの協議が不十分であり、令和2年度からはデータ収集が中止されていた。

【活動経過】 課題解決のために、令和2年度~令和4年度で県リハセンター及びWGにて、以下の活動を行った。

令和2年度:WG検討会を実施。本システムの課題、運用方法、今後の評価の方向性について検討を行った。令和2年度時点の課題では、以下の①~③があった。

①取り組みにおける地域差があり、全県下からのデータ収集ができておらず、県のデータとして反映しにくい。

②システムへの入力項目が多く、未入力・誤入力が多く、収集・分析できるデータ数が少ない。

③測定方法の統一が不十分であり、データの信憑性に欠ける。

 その結果、本システムの活用拡大を目標に、取り組みやすさと入力ミスの防止のため、評価項目を絞る必要性があることを確認。入力項目の削減、事業形態区分の見直し、測定方法動画をシステムに掲載するなどの新システム作成に向けた改善案を取りまとめ改修を行い、利用者に配布した。

令和3年度:新システムの活用状況のアンケート調査を実施した。アンケート調査結果では、全体の約8割が未使用であった。理由として、コロナ禍による活動自粛、システム自体を知らない、旧システムを使用中などの理由が多かった。そこでWG検討会後、運動器機能評価についての説明会を、利用者を対象に実施し、本システムの概要・活用に向けた啓発を実施した。

令和4年度:WG検討会にて、各市町村における本システムの活用状況の確認と対策について検討した。また、本システムの継続的な啓発を目的に利用者を対象に説明会を実施し、介護予防の取組効果の検証を目的とするデータ収集を再開した。令和4年度に収集したデータ数は3,817名(令和元年度収集データ4,242名)で、熊本県下の24市町村からのデータ提出があり、未入力・誤入力数も減少していた。本年度より収集できたデータの中からデータの分析を試みているが、対象者数が少なく、分析ができない項目もあった。

【今後について】 今後は、収集データ数の更なる改善を図るとともに、熊本県としての課題抽出や各地域の現状と取り組み効果等の検証も視野に活動を促進予定である。引き続きマニュアル整備やシステム改修を図りながら、利用者への本事業の理解を促すと共に、収集したデータの活用方法を提案し、評価に取り組む利用者を増やす必要性を感じた。

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© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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