九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題6[ 骨関節・脊髄① ]
1年以内に再入院となった脊椎圧迫骨折患者の早期再受傷に至る要因の検討
O-034 骨関節・脊髄①
土肥 昌太郎東 真彦髙野 直哉
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キーワード: 脊椎圧迫骨折, 再受傷, BMI
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p. 34-

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抄録

【目的】 高齢者において、脊椎圧迫骨折は頻度の高い骨折であり、脊椎圧迫骨折をきっかけに疼痛や脊椎変形により日常生活動作能力の低下が生じる高齢者は多い。また、初発の脊椎圧迫骨折をきっかけに再発する患者も少なくない。本研究の目的は、脊椎圧迫骨折早期再受傷患者の特徴から、これに関連する要因を探索し、理学療法士としての介入内容を検討することである。

【方法】 対象は、2017年4月~2022年1月に脊椎圧迫骨折を受傷した55例(男性8例、女性47例、平均年齢85.6±7.7歳)とし、1年以内に脊椎圧迫骨折が誘因で再入院した群25例(以下、再入院群)と再入院しなかった群30例(以下、control群)に分類し、再入院に影響する因子について比較検討した。検討項目は全て初回受傷時のデータとし、年齢、Body Mass Index(以下、BMI)、Young Adlut Mean(以下、YAM)、受傷機転、脊椎圧迫骨折既往の有無、既往脊椎圧迫骨折の椎体数、入院在日数、退院先、退院時の歩行形態とした。統計分析は従属変数を1年以内の再骨折の有無、各検討項目を説明変数とした多重ロジスティック回帰分析、Mann-Whitney U検定、Receiver Operatorating Characteristic curve(以下、ROC曲線)を行った。有意水準は5%とした。

【結果】 各項目での平均値は(再入院群/control群)、入院時年齢:87.7歳/83.9歳、BMI:18.4 ㎏/m2/20.7 ㎏/m2、YAM:66.4%/71.4%、受傷機転:転倒10例・他15例/転倒15例・他15例、脊椎圧迫骨折既往の有無:有14例・無11例/有7例・無23例、既往脊椎圧迫骨折の椎体数:0.92椎/0.23椎、入院在日数:69日/56日、退院先:自宅21例・老健、施設4例/自宅27例・老健、施設3例、退院時の歩行形態:独歩6例・杖歩行4例・伝い歩き3例・歩行器6例・車椅子介助6例/独歩11例・杖歩行8例・つたい歩き1例・歩行器8例・車椅子介助2例であった。多重ロジスティック回帰分析の結果、再骨折に影響する因子として、入院時BMI(オッズ比:0.741、P<0.05)が挙げられた。Mann-Whitney U検定の結果、入院時BMI(0.00632 P<0.05)を示した。ROC曲線の結果、入院時BMIカットオフ値:18.5 ㎏/m2(曲線下面積0.716、95%信頼区間0.579-0.853)を示した。

【考察】 本研究では、1年以内に脊椎圧迫骨折を再受傷した患者の再受傷因子について検討し、入院時BMIが低値であるという結果に至った。また、再骨折リスクのカットオフ値は18.5 ㎏/m2ということが分かった。このことから、BMIが18.5 ㎏/m2以下の患者に対しては早期再受傷のリスクが予測されるため、入院中の体重変動や栄養状態の把握、訓練負荷量に配慮する必要があると考える。また、当院で実施しているNST回診の対象として挙げ、他職種と情報共有を行い、多方面からの治療や介入を行っていく必要があると考える。

【まとめ】 今回、1年以内に再受傷となった脊椎圧迫骨折患者の早期再受傷に至る因子としてBMIが低値であること、カットオフ値が18.5 ㎏/m2という結果に至った。脊椎圧迫骨折患者には、入院時BMIが再受傷の予測に活用することが可能かと考え、理学療法士として介入する上で重要な一助になることが考えられる。

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