九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題7[ ウィメンズヘルス ]
産後うつに対する運動介入効果に関するシステマティックレビュー
O-040 ウィメンズヘルス
松田 憲亮髙松 夏帆西屋敷 美紅
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p. 40-

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抄録

【目的】 産後うつ病(Postpartum Depression 以下、PPD)の有病率は、周産期において12-19%程度と報告され、PPDは妊娠中または産後12ヶ月までに発生する軽度および重度のうつ病とされている。PPDの症状として、悲壮感、憂鬱、出産したばかりの子供への興味の不足や中傷に対する恐怖心があり、母親の幸福と子供の認知や運動発達に影響するとされている。PPDの予防に対する非薬物的手法として運動介入があり、これまでのメタアナラシスでは、PPD症状の予防または軽減における運動介入の有効性が検討されている。しかし、介入時期、運動介入の種類、研究の質が異なり、包括的な結論を妨げ、これらの知見を統合する研究は実施されていない。このシステマティックレビューとメタアナラシスでは、PPDの予防に対する運動介入効果だけではなく、1)介入時期、2)運動強度と頻度、3)重度の産後うつに焦点を当て、運動介入効果について検討することを目的とした。

【方法】 データベースはPubMedを用い、2010年1月1日から2021年11月30日までに公開された妊娠中または産後女性を対象としたランダム化比較試験(randomized controlled trail;RCT)を検索した。システマティックレビューについては、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに準じて実施した。最終的に採用した研究論文についてはバイアスの評価・検証を行い、メタアナラシスについては、Review Manager 5.3 for Windowsを用いてランダム効果モデルを実施した。サブグループ解析は、1)出産前の運動介入、2)産後期間の運動介入、3)運動強度(Borg Scale:12-14)、運動頻度(週3回)かつ指導付監視下の運動介入、4)重度のPPDに関する研究について実施した。

【結果】 検索された研究は248件、重複等を削除後、246件がスクリーニングされ、最終的に13件が採用基準を満たした。バイアスリスク評価では、参加者・研究者の盲検化について13件中2件がhigh risk, 9件がunclearと判断された。アウトカム評価者の盲検化については13件中8件がunclearと判断された。メタアナラシスでは、PPDに対する有効な運動介入効果を示した(RR=0.65, 95%CI=0.51-0.82)。サブグループ解析では、出産前の運動介入(RR=0.61, 95%CI=0.44-0.84)、運動強度(Borg Scale:12-14)、運動頻度(週3回)かつ指導付監視下の運動介入(RR=0.54, 95%CI=0.36-0.81)、重度のPPD(RR=0.72, 95%CI=0.53-0.98)のいずれもPPDに対する有効な運動介入効果を示した。産後期間の運動介入については有効性を認めなかった(RR=0.70, 95%CI=0.49-1.00)。

【結論】 PPDに対する出産前の運動介入、重度のPPDに対する運動介入は、予防効果が期待できる。運動強度ややきつい、運動頻度を週3回以上とした場合も予防効果が期待できるが、研究は全て出産前のものであり、出産前の運動方法として限定される。今回のシステマティックレビューに含まれた研究の研究方法の質があまり高いものばかりではなく、今後、適切に設計された研究によるエビデンスが求められる。また本研究は、ウィメンズヘルス領域の理学療法の発展において、エビデンスの構築に貢献する可能性がある。

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© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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