九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
会議情報

一般演題7[ ウィメンズヘルス ]
出産希望アンケートによる人事管理について
O-039 ウィメンズヘルス
末吉 恒一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 39-

詳細
抄録

【目的】 ワーク・ライフ・バランスや働き方改革が推奨される中、出産や育児をしながら働く環境作りは重要である。その中で、産育休による欠員に対する対策を講じ、患者・利用者へのリハビリテーション(以下、リハ)を滞りなく実施することを考える必要がある。そこで、当院リハビリテーション科(以下、当院リハ科)では、2015年度から出産希望アンケートを行い、5年先の実働人員をシミュレーションし人事管理を行ってきた。今回、本取り組みを検証し、今後の課題を明確にすることを目的とする。

【方法】

(1)2017年度 当院リハ科女性職員36人(平均年齢31±5.8歳)を対象とし、アンケート用紙を配布し回収した。

(2)アンケートは、目的やビジョンを説明した上で、個人情報が特定できないように配慮し回答は任意とした。

(3)アンケート内容は、下記の2点とした。

  1)将来、何人くらい子供が欲しいですか

  2)いつ頃、出産したいですか(今年、1年後~5年後、未定の7項目から選択。2人以上の場合は複数回答可とした)

(4)調査期間:2017年度~2022年度の6年間

(5)出産希望人数と実際の産育休人数の比較にSpearman順位相関係数を用い、有意水準は5%とした。

【倫理的配慮】 本研究は当院倫理委員会の承認を得ている(承認番号23-08)。

【結果】

(1)回答状況 35/36人(回収率97.2%)

(2)アンケート結果

  1)将来、何人くらい子供が欲しいですか(0人;3人、1人;6人、2人;12人、3人;13人、4人;0人、5人;0人、計34人)

  2)いつ頃、出産したいですか(2017年度;5人、2018年度;7人、2019年度;8人、2020年度;6人、2021年度;7人、2022年度;6人、未定;13人 年平均;6.5人、未定含めた年平均;7.4人)

(3)実際の産育休人数

 2017年度;5.8人、2018年度;6.8人、2019年度;6.2人、2020年度;6.4人、2021年度;4.5人、2022年度;4.2人、年平均5.7人。

(4)出産希望人数と実際の産育休人数の比較では有意な相関は認められなかった(p<0.05)。

【考察】 出産希望人数と実際の産育休人数者においては、有意な相関は認められなかった。しかし、2017年度~2018年度に関してはアンケート結果と実際の産育休人数が近い傾向であったことから、アンケート調査は1~2年後の動向を予測する上では有効であったと思われる。

 本アンケート調査を実施した2017年度には、実働人員が不足していたことにより、必要なリハを提供できず、入院リハの一部制限や外来リハの新規受け入れ制限等の課題があった。これらを改善する目的にて本アンケート調査を実施し、必要な実働人員を確保するために本データを根拠として雇用管理(定数増員)を図ってきた(2017年度65人、2018年度68人、2019年度69人)。

 これにより、患者・利用者への必要なリハサービスを滞りなく提供することが行え、出産や育児をしながらも継続して働きやすい職場環境作りに繋がったものと考える。また、その他職員においては、欠員による業務負担を回避することになり、職員全体にとって本取り組みは有効であったと思われる。尚、本取り組みは、女性職員を対象とした出産希望アンケート調査であったため、男性職員の育児休業取得や病休や介護休暇については含まれていない。2021年6月に「育児・介護休業法」が改正され、2022年10月からは「男性の出生時育児休業(産後パパ育休)」が施行された。当院においても男性職員の育休ニーズは高まっており、現在の重点課題である。また、病休や介護休暇に関しても、過去の実績を踏まえて検討し、時代のニーズに対応した人事管理につとめていきたい。

著者関連情報
© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top