主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 48-
【はじめに】 腰椎分離症は発育期におけるスポーツ活動などにより、腰椎椎弓の椎間関節突起間部に繰り返し負荷がかかることで発生する疲労骨折であり、当院を受診される発育期の患者の腰痛の大きな原因の一つとなっている。腰椎分離症の治療過程において、患者の病態理解の不十分さ、競技復帰への強い希望などにより治療が継続出来ず、骨癒合の遷延化、再骨折などを招いてしまう例も少なくない。そこで今回、運動療法介入と治療離脱患者の関係性に着目した。本研究の目的は、運動療法介入の有無が、患者の治療離脱の有無に影響を及ぼすかを明らかにすることである。
【方法】 対象は2018年1月から2022年12月までに当院を受診し、「腰椎分離症(初期~進行期)」と診断され、骨癒合を治療目標とした患者143名(男性108名、女性35名、平均年齢14.3±2.079歳)とした。運動療法介入群(1か月以上の継続的な介入)と非介入群に分け、その違いで治療離脱(予定された再診日以降に来院がなかった患者)に差があるかを比較検討した。群間の比較はχ2乗独立性検定を用い、p<0.01をもって有意差とした。
【結果】 運動療法介入ありの患者で、治療が継続できた患者は47名、治療離脱した患者が32名であった。運動療法非介入の患者では治療継続できた患者は16名と少なく、それに対し治療離脱患者は48名であった。χ2乗独立性検定の結果、有意な偏りが認められた(p<0.01)。
【考察】 腰椎分離症患者に対する運動療法介入は、患者の治療離脱を阻止できる可能性があることが示唆された。発育期腰椎分離症の最大の治療目標は関節突起間の骨癒合であり、治療方法はスポーツ活動の完全中止と装具療法が主であるが、併せて運動療法介入を行う事が治療離脱を防ぐ事に有用である事が示された。身体機能改善などのコンディショニングを行うことは再骨折予防に有用であるとされているが、加えてスポーツ活動中止の受け入れ、装具装着へのコンプライアンスなど治療離脱の要因となる部分に対しても、時期に応じたトレーニング指導、精神的ケアにて治療の満足度を上げる事に繋がったのではないかと考える。一方で、運動療法介入群にも治療離脱患者は一定数存在し、改めて腰椎分離症患者のスポーツ復帰までの十分な介入を継続する事の困難さが露呈された。今後の展望として、最適なプロトコルの再考、患者教育用のパンフレット作成、競技指導者への医学的知見の啓発など、多岐にわたる患者サポートを病院全体で充足させていき、引き続き、病期に応じた考察や、運動療法別の効果比較に繋げていきたい。
【倫理的配慮】 本研究は成尾整形外科病院倫理委員会の承認を得て実施した。(承認番号:23107)