主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 62-
【背景】 平成29年4月のLTAC心不全センター開設以降、当院にも高齢の心大血管リハビリテーション対象者が増加している。開設以降、心不全増悪に伴い、再入院を繰り返す症例もめずらしくない。初回の増悪要因と2回目以降の増悪要因の変化、またADLや再入院までの期間、退院先にも違いがあるように感じる。
【目的・意義】 増悪要因の変化、再入院期間の変化によって、入院中・退院時の多職種による心不全指導の効果・理解度を医療者側が把握できるのでないか。それにより今後の指導内容や指導時期も的確になり、心不全増悪を繰り返す要因の変化が新たな介入への手掛かりになるのではないか。
【対象者】 2017年4月1日~2021年3月31日までの4年間で当院へ心不全増悪で入院し、心大血管リハビリテーションを実施した同一患者を含む対象者(630名男性:273名、女性:357名、平均年齢85.75歳)のうち、心不全増悪での再入院2回目以降の対象者(111名 2回目:71症例、3回目:28症例、4回目:8症例、5回目:3症例、6回目:1症例)とした。
【方法】 増悪要因、基礎疾患、退院先、再入院までの期間、BNP、ADLを主項目とし、再入院までの期間、BNP、ADLに関しては心不全増悪2回目の群と心不全増悪3回目以降の群で比較・検定した。統計解析には、Mann-WhitneyのU検定を用いて、有意水準は5%未満とした。倫理的配慮として、所属機関の倫理審査委員会の承認および、研究対象者から書面で同意を得た。
【結果】 増悪要因に関しては塩分や水分制限の不徹底、内服コンプライアンス不足、オーバーワークを中心とした非医学的要因が多くを占めたが、心不全増悪を繰り返す要因が同じでない症例も多く存在した。基礎疾患に関しては心不全増悪回数に差はなかった。退院先に関しては入院前と同じ環境への退院が初回心不全入院群では約6割で一番高いが、増悪回数に伴って施設への退院や転院も増えている。増悪回数が増えることで独居や在宅での生活が困難となる症例が多いが、在宅系の施設を含めると両者で大きな差は認められなかった。再入院までの期間、BNPに関しては有意差ないが、BIとFIMともにADLに関しては有意差が認められた。
【考察】 心不全増悪には非医学的要因が多く、心ポンプ機能の破綻には同症例でも変化することは少なくないことがわかった。独居や在宅での生活が難しくなる一方、家族の同居や在宅系の施設への入所が増えることで医学的要因の管理が出来るようになっている。入院中のリハビリ提供と多職種での心不全指導によりADL向上させることで再入院期間までの期間を維持出来たのではないかと考える。