主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
1) 小倉記念病院 リハビリテーション課 2) 小倉記念病院 心臓血管外科 【目的】 大動脈弁狭窄症(AS)患者の栄養状態と大動脈弁置換術(SAVR)術後の転帰との関連性について検討を行ったので報告する。 【方法】 2017年1月から2023年7月までの期間に、当院心臓血管外科にてASに対して待機的SVARを施行した患者のうち、入院前に自宅で生活し、歩行補助具の使用も含めて歩行自立していた194例を対象とし、後方視的に調査した。 術前栄養評価にはGNRIを用いた。GNRI92点以上を栄養リスクなし(171例)、91点以下を栄養リスクあり(23例)と定義し、2群間で比較検討を行った。 次に転帰(転院)を従属変数とし、ロジスティック回帰分析を用いて、因子分析を行った。 検討項目は、基本情報(年齢、性別、GNRI、5m歩行速度、握力、フレイル、介護保険取得、家族要因)、血液生化学検査所見(BNP、LVEF、eGFR)、既往歴(心房細動、心不全、高血圧、糖尿病、脂質異常症、CKD、透析、脳血管疾患、呼吸器疾患)、肺機能検査所見(%肺活量、1秒量、1秒率)、喫煙歴、手術関連因子(アプローチ方法、手術時間、体外循環時間、出血量、輸血量、術前後体重差)、人工呼吸器装着時間、抜管後酸素投与時間、体外式ペーシング時間、ドレーン挿入時間、合併症(新規心房細動、せん妄、追加手術、脳血管疾患、感染症)、術後リハ関連因子(端座位開始日、歩行開始日、6分歩行実施可能日、歩行自立獲得日)、在院日数、転帰とした。 なおロジスティック回帰分析を行うにあたり、まず単変量解析を行い、p値が0.1未満の因子について多変量解析を行った。有意水準は5%とし、多重共線性に配慮して行った。 【結果】 2群間において、年齢、性別に有意差は認めなかった。栄養リスクあり群において、有意に5m歩行速度(遅)、握力(低)、フレイル(多)、介護保険取得(多)、BNP(高)、eGFR(低)、透析(多)、CKD(多)、%肺活量(低)、1秒量(少)、術前後体重差(大)、輸血量(多)、体外循環時間(短)、歩行開始日(遅)、6分間歩行実施可能日(遅)、歩行自立獲得日(遅)、歩行自立獲得日(遅)を認めた。次に、転帰と関連する因子として、GNRI(OR:0.90、p=0.01)、握力(OR:0.92、p=0.03)、家族要因あり(OR:10.20、p<0.01)、合併症(新規心房細動)(OR:3.78、p=0.03)、歩行自立獲得日(OR:1.15、p=0.03)について有意差を認めた。 【考察】 術前低栄養とフレイル、そしてCKDとの関連性については諸家にて報告されており,本研究においても栄養リスクあり群において身体機能が低く、CKD患者が多い傾向を認めた。また本研究において、転帰に関連する因子の一つとしてGNRI低値を認めたことについて、術前低栄養やフレイルがあることで、術後のリハビリ進行、歩行自立獲得までの日数が遅延したことで、入院期間中に術前ADLが獲得できず、リハビリ目的の転院が必要となったことが1つに要因として考えられた。また65歳未満においても栄養リスクありの患者を複数認め、すべて透析患者であったことより、栄養状態とCKDの関連性が本研究においても認められた。 【結語】 SAVR術後の転帰に関連する因子の1つとして栄養状態が関連していることがわかった。また低栄養とフレイルやCKDとの関連性についても示唆された。 【倫理的配慮】本研究は当院臨床研究審査委員会の承認(承認番号:23111501)を得て、ヘルシンキ宣言に則り実施した。また、事前に対象者からデータを使用する事への同意を得た上で、個人情報など十分な説明を行い実施した。