主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに】当院は急性期病院として外来心臓リハビリテーション (以下外来心リハ)を実施しており,急性期から一貫した患者教育,運動指導を図ることで円滑に維持期へ移行できるよう取り組んでいる.近年の入院期間短縮に伴い外来心リハの必要数は増加している.しかし当院外来心リハにおける開始目的や継続期間において明確な指標はなく,特に就業者では外来心リハを導入し医療保険が定める150日の実施期間を完遂する事や,復職の判断に難渋していた.それに対し2022年度6月より当院外来心リハ専用のプロトコールを作成.就業者に対する導入を通して,その効果や傾向に関する調査を行ったのでここに報告する. 【調査対象・方法】2020年4月~2023年12月において,プロトコール導入前群と導入後群の2群をそれぞれ調査した.対象は当院心臓血管内科にて入院加療後,外来心リハを開始した病前就業者の内,導入前群11例,導入後群17例とした (データ欠損例は除外).調査項目は(1)患者背景[年齢,性別,疾患名,復職率],(2)初回と最終時点(プロトコール導入後の症例は3ヶ月時点)の身体機能評価[最高酸素摂取量(以下peak VO2),代謝当量(以下METs),握力,膝伸展筋力],(3)プロトコール内容[開始目的,開始時問題点]を診療録より後方視的に調査. (1)(2)は両群間で比較しその効果と傾向を調査,(3)は特徴を整理した.プロトコールは以下に示す. [目標設定]:外来心リハの開始目的 (医学的管理,運動耐容能改善,身体機能改善)と問題点を7項目 (運動管理,食事管理,心理的・社会的背景,喫煙管理,血圧管理,運動耐容能低下,身体機能低下)から明らかにする. [Phase1(3ヶ月目)]:選択した各問題点の改善度をVisual Analogue Scale(VAS)で自己評価を行う.心肺運動負荷試験(以下CPX)を実施し,開始目的の達成度評価を行う.問題点改善度が80%以上もしくはCPX結果の改善やその他評価の改善を認める場合はphase3へ移行を検討する.それ以外はphase2へ. [Phase2(3~5ヶ月目)]:問題点の再考とCPXの結果を基に運動プログラムの更新を行う.復職や趣味再開の時期を検討する. [Phase3]:問題点の改善度を再評価.完全な非監視下の運動へ移行を検討する. 【結果:中央値(導入前群/導入後群)】 (1)年齢(歳):57/71.性別(例):男9女2/男14女3.疾患(例):急性心筋梗塞(以下AMI)6,慢性心不全(以下CHF)4,その他1/AMI12,CHF3,その他2.復職率(%):64.6/76.5. (2)peakVO2(%):初回52/60最終65/70.5.METs:初回2.59/3.07最終3.65/3.74.握力(kg):初回37.4/36最終41.5/37.1.膝伸展筋力(kgf):初回47/49最終52/53. (3)開始目的(例):医学的管理8,運動耐容能改善7,身体機能改善2.開始時問題点(%):運動耐容能低下35,運動管理33,血圧管理15(上位3項目). 【考察】結果から認めた傾向としては,(1)で導入後の対象患者の高齢化と復職率の向上を認めた.(2)では全体的な数値の改善は認めるが,改善度としては導入後で低い傾向にあった.プロトコール導入は高齢就業者への理解促進にも寄与し,外来心リハの対象患者層の拡大効果があっと考える.その影響は復職率の向上や(2)の結果にも反映していると考えられる.本邦における心疾患患者の復職率は74~80%との報告もあり,今回の結果と相違はなかった.(3)では運動面に対する関心の高さが反映されていた.運動処方内容の充実化も今後の復職率の向上へ影響する可能性が示唆された.今後は導入症例数を増やすことと,外来心リハ中断例や失業者にも着目して要因分析を行い,プロトコールの制度向上を図りたい. 【倫理的配慮】本調査は,ヘルシンキ宣言に基づき対象者における個人情報の保護など十分に留意し,匿名化した上で実施した.