主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに】 少子高齢化の進展に伴い、生産年齢人口の減少、就労年齢の延長など我々の働く環境は変化しつつある。企業においては、従業員が健康に働き続けられるよう働き方改革、職場環境の整備、健康経営といった取り組みが推進されている。こうした背景において産業保健の関わりは重要であり、理学療法の領域では産業理学療法の実践が必要である。これまで大分県理学療法士協会 (以下、当協会)は、社会局が主体に産業理学療法に関する事業を行ってきたが、2019年西部保健所の「職場ぐるみの運動スタート・定着推進事業」、2020年から続く大分県健康増進室健康寿命延伸班 (旧:健康づくり支援課)の「おおいた心と体の職場環境改善アドバイザー派遣事業」を通じ、協会員が実践経験を積む機会を得ている。今回、これら2つの事業における当協会の活動を報告する。 【活動内容と結果】 「職場ぐるみの運動スタート・定着推進事業」 (2019年) 西部保健所管内 (日田市および玖珠郡内)の事業所に対し、運動プログラムの提供や専門職による運動の動機づけや実践指導を行い、従業員が事業所や家庭で継続して運動に取り組むことができるように支援することで、職場ぐるみの運動定着を図ることを目的に実施された。具体的には1)事業所への運動専門職派遣、2)職場で行える運動プログラムの作成である。1)の専門職派遣では、9月~2月の期間で西部保健所管内の8事業所 (製造、建設、林業、販売、福祉)に各2回、2~3名の理学療法士を派遣し講話・運動指導を行った。2)の運動プログラムにおいては、当協会が運動内容を監修し、作業タイプ別の動画を作成した。 「おおいた心と体の職場環境改善アドバイザー派遣事業」 (2020年~現在) 本事業は大分県が進める健康経営事業所パワーアップ事業の一環であり、大分県に登録された健康経営登録事業所を対象に心と体の職場環境改善アドバイザーを派遣し、職場に合せた職場ぐるみの健康づくりに向けた助言や支援を目的としている。心と体の職場環境改善アドバイザー養成は、理学療法士、作業療法士、公認心理師を対象としており、これまでに理学療法士は34名の協会員が養成研修を修了している。派遣実績は、コロナ禍で制約がある中、2020年1事業所、2021年13事業所、2022年7事業所、2023年8事業所の計29事業に理学療法士のアドバイザーを派遣している。 【まとめ】 当協会にとって、これら2つの事業は産業保健、産業理学療法実践の大きな転機となった。以前から産業理学療法について啓発を含めた研修会を開催していたが、実践経験の機会は少なく、組織として本格的に人材を派遣するのはこれらの事業が初であった。派遣先では、主に作業環境や作業姿勢を評価し、腰痛、肩こり対策など職場で取り組める運動の提案を行っている。また、本事業を通じ、主担当の社会局だけでなく、ブロック局、職能局が協力し横断的な体制で取り組めていることも協会にとって好影響をもたらしている。一方で、事業に関与する協会員の殆どが、実践経験がない状況にあり、はじめから具体的な指導ができるわけでなく、短時間で指導出来ることも限られている。加えて、協会員を派遣するには、日常業務の調整が必要であり職場の理解を得るとことも必要である。 今後も継続して産業保健、産業理学療法を協会組織として提供できるよう、協会員のスキル向上と組織としての仕組みを整えたいと考えている。 【倫理的配慮】倫理的配慮に関し、大分県及び当協会の許可を得ている。