九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: O13-1
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セッションロ述13 スポーツ・健康3
大腿四頭筋腱を用いた前十字靱帯再建術の短期成績
田渕 俊紀西古 亨太平野 敦大井手 智輝吉原 正英
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キーワード: ACLR, QT, 治療成績
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抄録

【はじめに】 前十字靭帯損傷の治療には前十字靭帯再建術 (以下ACLR)が第一選択肢となり、そのグラフトとして膝蓋腱 (以下BTB)、ハムストリングス (以下HT)が用いられることが多く、術後経過や治療成績についても散見される。近年、本邦において大腿四頭筋腱 (以下QT)を用いた再建術も行わることが多くなっており、当院においても2023年より開始した。しかし、その術後経過や治療成績、特にリハビリテーション関連に関しては報告が少ないのが現状である。そこで今回、当院におけるQTを用いたACLRの短期成績について調査したため報告する。 【目的】 当院におけるQTを用いたACLRの短期治療成績を調査、検討すること。 【方法】 2023年6月〜2024年8月の間に当院においてQTグラフトを用いたACLRを行い、8ヶ月経過を追うことが可能であった12名、12膝を対象とした。平均年齢24.4±12.4歳、男性5名、女性7名であった。術前、術後4ヶ月、術後8ヶ月の比較を行った。評価項目はJ–KOOSの各項目 (症状、痛み、日常生活、スポーツ、生活の質)とした。 また術後4ヶ月、8ヶ月時点で等速性筋力を測定した。筋力測定にはMedica社製CYBEX NORMを使用し、60deg/sec、180deg/secにおいて伸展・屈曲運動の筋力健患比を測定した。統計解析はRコマンダー2.7-2を用い、術後4ヶ月と8ヶ月の等速性筋力についてShapiro-Wilk検定で正規性を確認した後、対応のあるt検定もしくはWilcoxonの符合順位検定を行った。有意水準は5%未満とした。 【結果】 術前/術後4ヶ月/術後8ヶ月の結果、J-KOOSは症状72.6±23.1/83.9±11.6/89.0±13.3、痛み76.6±20.9/91.4±7.5/94.2±5.4、日常生活81.1±25.3/95.3±5.3/97.8±4.6、スポーツ41.3±27.8/69.2±22.2/85.4±21.3、生活の質45.8±26.8/71.3±21.6/80.2±16.6であった。等速性筋力は術後4ヶ月/8ヶ月の結果、60deg/sec測定で筋力健患比伸展0.59±0.11/0.74±0.14、筋力健患比屈曲0.89±0.11/1.03±0.14であった。180deg/sec測定で筋力健患比伸展0.66±0.13/0.80±0.20、筋力健患比屈曲0.89±0.15/1.00±0.20であった。筋力健患比伸展屈曲ともに優位差を認めた。 【考察】 J-KOOS症状、痛み、日常生活項目は術前から術後4ヶ月で大きく改善し、術後8ヶ月では緩やかな改善を認める傾向であった。一方、スポーツ、生活の質に関しては術前、術後4ヶ月、術後8ヶ月と段階的に改善を認める傾向であった。これはJ-KOOSの設問上、スポーツ項目においては強度・難易度が高いこと、生活の質においては術前の活動レベルが影響していることが考えられる。また、筋力において、QTを用いたACLRでは屈曲筋力は維持される傾向だが、伸展筋力の回復が遅延すると言われており、先行研究に近似した結果となったと考える。 【まとめ】 今回、当院におけるQTを用いたACLRの短期成績を調査した。リハビリテーション分野におけるQTを用いたACLRの治療成績はまだ少なく、今後の蓄積と標準化が求められる。 【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に準拠し、対象者に対して本研究の趣旨及び方法、結果の取り扱いについて十分な説明を行い、同意を得た上で実施した。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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