主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【目的】 近年,TKA後の臨床指標として,国際的にQOLや満足度に特化した患者立脚型アウトかムを用いた評価が重要視されており2011Knee Society Score (KSS)は我が国においても有用性が認められ,術後の満足度を含めた検討に用いられている.今回,TKAを行った症例について,術後1年までの経時的な推移を調査することとした. 【方法】 対象は変形性膝関節症の診断でTKAを行い,術後12か月追跡可能であった男性25名,女性97名,計122名 (年齢73.5±7.4歳)を対象とした.術前,術後1か月,3か月,6か月,12か月の膝関節屈曲・伸展可動域,全身の健康状態,KSS (合計,Ⅰ膝の症状,Ⅱ満足度,Ⅲ期待度,Ⅳ活動性)の比較に,それぞれ対応のある2群以上の間の平均値の比較として反復測定分散分析を用い,5%未満を有意差ありとした. 【結果】 膝関節屈曲可動域の推移 (術前/術後1か月/3か月/6か月/12か月)は118.4±16.7°/113.9±14.3°/118.9±11.5°/119.7±17.4°/119.4±16.1°と術前から術後1か月で一旦低下したが,その後術後1か月から術後12か月まで有意差を認めた.膝関節伸展可動域の推移は-10.7±6.1°/-4.4±5.2°/-3.5±5.2°/-2.7±4.0°/-2.2±4.0°と術前から術後3か月まで有意差を認め,健康状態は,60.4±23.3mm/65.7±19.6mm/72.2± 18.8mm/74.5±17.4mm/80.6±16.1mm,KSSにおいて合計が88.9± 22.4/91.2±20.0/105.1±19.1/113.7±17.0/117.6±20.4,Ⅱが17.1±6.2 /20.0±6.0/23.2±6.0/25.1±6.1/26.9±6.8, Ⅳが47.6±17.3/47.3±15.2 /59.8±15.9/64.9±14.0/68.2±16.4と術前と比較して術後12か月において有意差を認め,KSSⅠは11.0±4.7/15.0±4.7/13.2±6.2/14.5±6.0 /12.8±6.9と術前から術後1か月で一旦低下したが,術前と比較して術後6か月において有意差を認め,KSSⅢは13.2±2.0/9.0±2.0/8.9±2.2/9.2 ±2.0/9.6±2.0と術前と比較し有意差は認められなかった.また,調査した全項目において術後6か月以降は変化がなく術後6か月から12か月で有意な相関は認められなかった. 【考察】 今回,膝関節屈曲・伸展可動域,健康状態,KSS合計,Ⅰ,Ⅱ,Ⅳにおいて術前と比較し術後で有意な改善が認められた.しかし,KSSⅢ期待度において有意な改善が認められなかった.McCaldan RWらは,術前のROMが100度未満の場合は術後のROMが術前より改善する傾向にあるが,術前のROM が120度以上の場合は,術前と比べた術後のROMは低下することが多いと述べており,患者の期待と術後の日常生活との解離を生じやすいと報告している.今回の対象においても術後1か月で可動域が低下しており,術後早期において期待と術後の日常生活との解離が生じやすいことが示唆された.TKA対象患者に対して,術後の回復予測や日常生活・娯楽活動の獲得時期を示すことが期待度に沿うために必要であると考える. 【結語】 今回TKAを施行した症例について,術後1年までの経時的な回復段階を調査した.全項目において術後6か月と12か月では有意差が認められず,TKA術後の回復段階は術後6か月までが重要であることが分かった.また,KSSⅢにおいて術前と比較し術後で有意差が認められなかった.今後,TKAと患者の期待度に関与する因子について調査したいと考える.また,今回TKA術後1年までの経時的な推移の調査を把握することにより,患者に時期に応じた,ADL回復段階等を示すことができると考える. 【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理原則および計測研究に関する倫理指針に従い,研究計画を遵守して行った.対象者には,研究内容の説明を口頭にて行い参加する旨の同意を得た.なお,本研究における利益相反に関する開示事項はない