九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: O15-2
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セッションロ述15 骨関節・脊髄4
内側開大式脛骨粗面下骨切り術前後における足関節アライメントの変化
塚田 奈海深谷 英里澁谷 徹小松 智米倉 豊井手 衆哉鶴田 敏幸
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抄録

【目的】 変形性膝関節症は高齢者に高い割合で生じる退行性変性疾患であり、疼痛や日常生活障害を生じさせる.対する治療は保存療法や手術療法などがあるが、変性が早期で活動性が高い症例には膝蓋大腿関節に影響が少ないとされる内側開大式脛骨粗面下骨切り術 (OWDTO)が適応となることもある. OWDTOは関節温存しながら内側にある下肢荷重線を外側へ移動させるとともに、脛骨粗面下で骨切りすることで膝蓋大腿関節への負荷を軽減させる手術である.膝関節を中心とする全下肢のアライメント変化が起きることで隣接する股関節や足関節、足部に対しても影響を与えると考えられている.当院術後症例においても、術後の足関節の疼痛や可動域制限を呈する症例を経験した.そこで今回OWDTOが足関節アライメントに与える影響を明らかにするため、立位全下肢X線画像を用い術前後の足関節傾斜角を比較検討した. 【対象と方法】 当院にて2022年から2023年までにOWDTOを施行し経過観察可能であった44例45膝(男性17名女性28名、年齢64.7±5.9歳)を対象とした.術前、術後6ヶ月時の立位全下肢X線像を用いてtibiotalar tilt angle (TTA)、tibial plafond inclination angle (TPIA)、talar inclination angle (TIA)を計測した.床の平行なラインを0とし、足関節内反方向をプラス、外反方向をマイナスとした.術前、術後の比較は、Wilcoxon符号付順位和検定を使用し有意水準5%とした. 【結果】 TTAは術前平均1.81° (0~5.1°)、術後平均1.56° (0~7.6°)であり、有意差は認められなかった.TPIAは術前平均6.77±4.21°、術後平均1.06±4.17°と術前に比べ有意に減少していた.TIAは術前平均7.44±5.67°、術後平均2.13±4.77°と術前に比べ有意に減少していた. また、TPIA TIAが術後に床と平行に近づいた症例は39例であった. 【考察】 OWDTO術後において膝アライメントが矯正されたことにより、TPIA TIAが術後減少しており、距骨が外反していることが分かった.諸家らはOWHTOに伴う膝関節アライメント矯正による膝関節面傾斜増大の約2/3は足関節傾斜により代償されるとされ、足関節面傾斜の多くは内反から外反方向へ変化すると報告されている.今回の結果についても同様に、膝関節アライメントの変化は足関節で代償され、TPIA TIAが外がえし方向へ変化することが確認された. また下肢荷重線は膝関節内側から外側へと変化し膝アライメントは外反位へ変化したが、TPIA TIAが外反方向へと変化することで足関節においては内側に荷重部が移動することが考えられる.さらに荷重部が足関節内側に続くと舟状骨が下降して内側縦アーチの減少が起き、足関節痛や足関節背屈可動域低下を引き起こしうることが予想される. 本研究において、術後にTPIA TIAの減少を示し、床と平行な角度へ近づいた症例が多く占めた.一方で、TPIA TIAもしくはTPIAが術前より過度に外反方向へ移動した症例もあった.そのような症例では術前から距骨下関節の回内とそれに伴い前足部が外転するなどの代償動作が見られている例もあり、術前時から足関節のアライメント不良を起こしていた可能性がある.このことから術前に足部アライメント不良を起こしている場合には、足関節傾斜角の確認とともに、足部・足関節におけるアライメント修正を早期に取り組んでいくことが重要であると思われる. 【倫理的配慮】被験者には、本研究の調査内容や起こりうる危険、不利益などを含め説明し、また、個人情報に関しては、学会などで研究結果を公表する際には個人が特定できないように配慮することを説明し同意を得た.

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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