九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: O16-4
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セッションロ述16 測定・評価
高齢者における体組成の特徴が理学療法の信用財となる可能性
中江 誠
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キーワード: 体組成, 高齢者, 信用財
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抄録

【目的】高齢者の体組成における知見から特徴を述べ,合わせて理学療法士の可能性に関する仮説を報告することである. 【方法】対象は,体組成計 (InBody社製 S10)を導入後に,測定・保存された4年間 (2019年6月-2023年4月)のデータ2,280値を,65歳未満・再入院 (所)・誤入力・切断患者・地域在住高齢者を除外項目として,初回時の入院あるいは入所をした女性541名 (87歳) 男性281名 (82歳)とした (中央値). 調査項目は,BMI・骨格筋量kg・骨ミネラル量kg・体水分均衡 (ECW/TBW)・位相角°および体脂肪に関しては,内臓脂肪面積㎠ (VFA)を参考値として加えた. BMIは性差を比較し (マンホイットニーのU検定),その他の項目は年齢および骨格筋量との関係性を性別に, Pearsonの積率相関係数で求めた. またVFAは,性別で年齢との分布を確認した上で, BMIとの相関係数も求めた. 合わせてVFAが100㎠を超えるBMI25以下の患者を性別に確認し (マンホイットニーのU検定),内臓脂肪型肥満と隠れ肥満の関係についても検討した. 有意水準はすべて5%未満とした. 【結果】BMIに性差はないものの,女性は低BMIに該当した (GLIM基準). 年齢と他の項目との相関係数r (女性/男性)は,骨格筋量 (-0.253/-0.389) 骨ミネラル量 (ns/-0.245) ECW/TBW (0.232/0.339) 位相角 (-0.290/-0.281)であった. 骨格筋と他の項目との相関係数rは, 骨ミネラル量 (0.587/0.846) ECW/TBW (-0.208/-0.450) 位相角 (r=0.338/0.466)であり (全てp<0.0001),年齢とは異なる相関を認めた. VFAが100㎠を超えたのは,女性 (224名:41.4%) 男性 (85名:30.2%)であった. VFAとBMIとの相関係数r (女性/男性)は, (0.822/0.752)と強い相関を認めた. またVFAが100㎠を超えるBMI 25以下のBMIは, 女性 (23.2) 男性 (24.3)で,女性が有意に低値であった (p<0.01). 【考察】加齢に伴う体組成の変化として,骨格筋や骨ミネラルが減少し,浮腫へ傾き活動量の低い「痩せた高齢者」は,一般的な臨床像である. ほぼ同様の状態が確認されたことから,エネルギーの出納を考慮した理学療法と栄養療法との複合的介入の必要性が考えられた. 一方骨格筋量との間には,骨ミネラル量の増加と浮腫の軽減,さらには細胞膜の健全性などの体組成バランスの改善が考えられた. この一連の関係性は,運動負荷による筋タンパク同化促進や異化抑制を伴った,骨格筋量の相対的増加の可能性を示唆するものであり,理学療法を実践する上で,可変臓器である骨格筋の可視化は有益と考える. また内臓脂肪型肥満はVFAが腹部CTで100㎠以上が診断基準であるが,高齢者層でも多いことが分かった. 更に隠れ肥満の存在は, BMIのみで判断するには限界があることも確認できた. 高齢者においても,内臓脂肪の減少に有酸素運動が重要と思われるが, 本研究はID化されたデータによる後方視的な確認のため,入退院時の比較や疾患別,筋力及び運動機能等などとの相関性の確認は不可能で研究限界と考えている. 【結語】理学療法士による体組成の見える化が伴った運動介入は,信用財としての社会的価値が高まると思われる. 【倫理的配慮】本演題は倫理委員会の承認を得ており(第23-006号)関連して筆頭演者に開示すべき利益相反はない

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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