九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: P9-1
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セッションポスター9 呼吸・循環・代謝
術後身体活動が肺切除前後の6分間歩行距離の変化に及ぼす影響
呉屋 太造名嘉 太郎高良 奈津子古堅 智則照屋 孝夫古川 浩二郎大屋 祐輔
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抄録

【はじめに】 肺切除術後は、術前と比べて術後6分間歩行距離 (6MWD)が短縮すると報告されている。また、肺切除術後に身体活動は低下し、将来の健康関連QoL低下に影響を及ぼすことが分かっている。術後中〜高強度身体活動 (MVPA)低下は、術後6MWD低下の要因の一つであると推察されるが、その影響に関する報告は見当たらない。本研究の目的は、肺切除術後のMVPAが6MWD回復率に影響を及ぼすか調査することである。 【方法】 本研究は、単施設による後ろ向きコホート研究であり、2017年10月〜2023年3月に腫瘍性肺疾患に対し肺切除術を施行し、周術期リハビリテーションを実施した症例を対象とした。術前後に独歩にて6MWTを実施できなかった症例、身体活動量計を2日間以上装着できなかった症例を除外した。6MWTを実施 (術前:手術前1〜3日、術後:退院前1〜3日)し、6MWDを計測した。6MWD回復率 (術後6MWD/術前6MWD*100)を90%以上 (High-RR群)、90%未満 (Low-RR群)で2群に分割し、関連する因子を診療録より後方視的に調査した。身体活動量は3軸加速度計を用いて術後胸腔ドレーン抜去後以降に計測し、2日間以上のMVPA (3メッツ以上)合計値の平均を活動量計装着時間 (分)で除した値を%MVPAとした。統計解析は、High-RR群とLow-RR群の群間比較を各変数の分布に応じて、連続変数はWelchのt検定もしくはWilcoxonの順位和検定を行った。また、カテゴリ変数は、Fischerの正確確率検定を行った。次に、目的変数を6MWD回復率、説明変数を%MVPA、群間比較にてp<0.25の変数もしくは、臨床的有意性を考慮した変数を共変量とした多変量ロジスティック回帰分析を行った。解析は、JMP pro15.0.0とG*Power3.1を使用した。 【結果】 解析対象は60例であり、High-RR群39例、年齢62 (IQR 52-70)歳、男性26例 (66.7%)、Low-RR群21例、年齢64 (IQR 58-69)歳、男性9例 (42.9%)であった。%MVPAは、High-RR群:6.71 (IQR 5.2-8.58)%、Low-RR群:5.68 (IQR 3.1-7.5)%であった (効果量 (d)0.53、p=0.06)。多変量ロジスティック回帰分析における共変量は、年齢、性別、術前大腿四頭筋力、術前努力性肺活量 (%予測値)、術前6MWDであり、%MVPAは6MWD回復率に対する有意な変数であった (オッズ比 1.38、95CI 1.08-1.87、p=0.007)。 【考察・まとめ】 本研究において肺切除術後の6MWD回復率に%MVPAが影響を及ぼすことが示唆された。術後は、MVPAを高めていくことが6MWD回復率低下を防ぐために重要であり、患者指導やケアの充実など術後入院期リハビリテーションの質を高める必要性が考えられた。今後は、具体的な介入方法の探索のためにMVPAに関連する要因を調査する必要がある。 【倫理的配慮】本研究は、当院の人を対象とする生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認を得て実施された【許可番号:22-1922-01-00-00】。また、「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施した。研究方法や同意文書の開示はオプトアウトにて実施した。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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