九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: P8-5
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セッションポスター8 骨関節・脊髄3
声かけによる最大筋力測定 −性差の検討−
白石 大地後藤 久貴
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キーワード: 握力, 声かけ, 性差
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抄録

【目的】臨床で最大筋力測定をする機会は非常に多い。先行研究で最大筋力は、声かけなどの外部刺激によって増加することが報告されている。これは、心理的限界を生理的限界に少しでも近づける方法 (脱抑制)であるとされている。この方法を用いて、最大筋力の変化を性差の観点から検討した報告は凌駕し得た限り散見されない。そこで今回、健常成人を対象に最大筋力を声かけの有無を条件として、性差を検討したのでここに報告する。 【方法】対象は、健常成人24名 (男13名、女11名、平均年齢40.3±9.4歳)とした。最大筋力は、握力測定機器 (ツツミ社製、DDL−100)を用いて、利き手の握力を2回測定し、最大値を代表値とした。測定条件は、握力測定時に開始音のピストル音とともに検者の「もっともっと頑張れ!」といった声かけの有無とした。測定姿勢は、下肢を肩幅に開いた直立姿勢、上肢を自然下垂位で測定し、握り幅は、人差し指の第2関節がほぼ直角 (90°)になるように測定した。得られた値は、声かけ「なし」を基準にして、「あり」の握力値の増加率 (%)を算出し、性差を検討した。 【結果】握力は、全体で比較すると声かけ「なし」と比べて、「あり」の方が有意に高値を示した (p<0.01)。増加率は、男性よりも女性の方が有意に高値を示した (p<0.05)。 【考察】先行研究によると声かけによって最大筋力が約5%〜8%増加することが報告されている。この声かけは、脱抑制方法とされており、神経要因の影響を高める方法である。また、近年、筋電図学的検討によって、最大筋力発揮時に男性よりも女性の方が運動単位の活動が高いとされている。このことを踏まえると女性の方が握力値の増加率が高値であったのは、声かけによって強く神経要因の影響を受けて男性よりも握力値が増大したものと考えられる。 【結語】今回、健常者を対象に握力を声かけの有無を条件にして性差を検討した。握力は、声かけ「なし」よりも「あり」の方が約3.6%の高値を示した。握力の増加率は、男性よりも女性の方が有意に増加していた。特に女性への筋力訓練の工夫のひとつとして、筋へ強い負荷を加えたい場合は、声かけなどの外部刺激を加える手法は、有効な方法になり得るのかもしれない。 【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき本研究参加者には、研究⽬的、⽅法、参加は⾃由意志で拒否による不利益はないこと、及び、個⼈情報の保護について、⽂書と⼝頭で 説明を⾏い、書⾯にて同意を得た。発表にあたり、患者の個⼈情報とプライバシーの保護に配慮し、書⾯にて同意を得た。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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