主催: 社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会, 社団法人 日本作業療法士協会 九州各県士会
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急性心筋梗塞(AMI)の機械的合併症には、心室中隔穿孔、僧帽弁乳頭筋断裂、心破裂などがあり、いずれも救命率が低いとされている。仮に、救命できたとしても他の合併症を併発することが多く生命予後は不良である。理学療法の適応となる症例も少なく、具体的な報告は少ない。
今回、AMI後に心破裂を2度合併した症例を経験した。再破裂の危険も極めて高く、術直後より血圧・不整脈のコントロールを徹底して実施した。そして、再々破裂を起こすことなく経過し、理学療法開始に至った。1ヶ月にわたる臥床により著しい四肢の廃用性筋力低下を生じていたものの、血圧を上昇させずに筋力増強を行う必要があったため、等尺性の運動は実施せず等張性の運動を主体として行い、血圧を上昇させやすい上肢の運動を避け下肢の運動を重点的に行った。これにより血圧の大きな変動なく下肢筋力や運動耐用能が向上し最終的に日中車椅子上坐位をとれるようになるまで改善した。
以上より、心破裂後の症例においても血圧や不整脈の管理を徹底し理学療法を行うことによりADL能力の向上が十分期待できる。