主催: 社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会, 社団法人 日本作業療法士協会 九州各県士会
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非接触型ACL損傷は圧倒的に女性に多く,その要因として筋力・関節弛緩性・反応時間・女性ホルモン・体型などが挙げられている。その中でも内因性要因である女性ホルモンの影響に関しての先行研究は多数報告されており,組織学的研究では,エストロゲンの投薬がウサギの腱組織のコラーゲン量を著しく低下させること、月経中のエストロゲン濃度の変動は,ACL内コラーゲンの物質交代,量,形態の変化を引き起こす可能性があることなどが報告されているが、人体における月経周期中の膝関節動揺性の経時的変化は多数研究報告がなされているにも関わらず,統一した見解をみない。我々もACL術前・後の評価に対してKT-2000 knee arthrometerを用いて膝関節動揺性の測定を実施しているが、その経験のなかで動揺性の変化に個人差があるのではないかという疑問が生じた。そこで今回の研究では3例の女性被験者の月経周期中の膝関節前方移動量を測定し,3者間のデータを比較検討してみた。結果は1例ごとにそれぞれ特徴的な兆候があり性周期ごとの膝laxityに個体差があることを示唆する結果となった。研究結果から性周期により膝関節前方移動量に変動がみられる症例では,エストロゲンに対して感受性が高いか,ACLにおけるエストロゲンレセプター数が多いなどの原因が結果に対して影響しているものと考える。