九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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TKA中期成績
*神谷 喜一新垣 綾子新垣 晃
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p. 12

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抄録

【はじめに】
 変形性膝関節症(以下、OA)における人工膝関節全置換術(以下、TKA)は、疼痛除去やアライメントの修正によりQOLの向上に大きな影響をもたらしている。しかし、術後のフォローアップが十分でないため関節可動域(以下、ROM)など機能評価における長期成績の把握ができていないのが現状である。
 そこで今回、当院にてTKA施行後3年以上経過した症例の追跡調査を行ったので報告する。
【対象および方法】
 当院にて、1999年4月から2001年2月までにOAと診断されTKAを施行された70名103膝(男性10名、女性61名)平均年齢73.3±6.5(男性72.5±8.3、女性73.5±6.2)歳。
 追跡調査項目として関節可動域テスト(以下、ROM-T)、日本整形外科学会膝治療成績判定基準(以下、JOAスコア)を評価し、術前評価と比較検討した。術後平均日数は1215.2±159.4日、最長1568日であった。
 人工関節の機種は、ZIMMER(NEXGEN LPS:43膝、LPS-Flex:1膝、CR:1膝)、DePuy LCS:58膝であった。
【結果】
 術前と3年経過後の間で、ROM-Tにおける伸展角度とJOAスコアにおける歩行能、階段昇降能、腫脹、総計に1%の危険率で有意に改善が認められた。ROMとJOAスコアは、3年経過後も好成績を維持している結果であった。
【考察】
 今回、果たしてTKA施行した症例は長期的に良好な機能が得られているのかという疑問に対し、TKA施行後3年以上経過した症例を追跡調査して機能評価を行った。
 多くの症例において術前の屈曲拘縮が改善され、屈曲角度は術前同様ほぼ120°と維持され、椅子からの立ち上がりや階段昇降を有利にしている。さらにJOAスコアにおける歩行能は1km以上の歩行を可能にしており、階段昇降能でも一歩一歩なら手摺りを使わないでも可能であった。これらを考慮すると、十分QOLの向上に繋げられたのではないかと考える。
 中期成績では良好な結果であったが、長期成績では加齢による移動能力の低下や生活範囲の狭小化が予測される。したがって、転倒予防、廃用予防を含めたホームエクササイズ指導や膝に関する疼痛評価、手術に対する満足度、全身的な評価など調査内容を広げ、今後更なるフォローアップが重要になると考える。
 今回は中期成績を調査したが、今後は年に一度の定期診察を呼びかけ、継続的にフォローアップを行い長期成績の把握に努めていきたい。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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