九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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関節リウマチの身体活動量と炎症マーカーの関係
*西山 保弘佐藤 義則塩川 左斗志山元 裕子矢守 とも子工藤 義弘尾山 純一
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p. 13

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抄録

【はじめに】
 患者がより高い生活能力を維持することは、リハビリテーション医療の目標であり、その生活活動の持久性は満足度の高いQOLを提供する不可欠な要素と言える。関節リウマチ(RA)のリハビリテーションにおいて安静と運動のバランスは、治療上基礎療法となる。本研究では、加速度センサーを内蔵した携帯型身体活動量測定装置を用いてRA患者の24時間身体活動量を測定し、炎症マーカーと日常生活身体活動量との関連性について検討した。
【対象】
 本研究の意義を理解し承諾を得た外来RA患者13名(平均年齢54.3±7.1歳)およびコントロールとして健常女性6名(平均年齢45.2±6.2歳)。
【方法】
 RA活動性評価として、Lansbury評価法(AI)と血沈(ESR)、C反応性タンパク(CRP)などの炎症マーカーを用いた。その他、ADLテストは厚生省特定疾患神経筋疾患リハビリテーション調査班ADLテスト表(ADLテスト)を採用した。QOL評価としてFace Scale、10m歩行時間、プレドニゾロン使用の有無を調査した。身体活動量評価はGMS社製アクティブトレーサーAC-100を使用した。本機は、X軸Y軸Z軸方向への3つの加速度センサーが、体動変化を0.05G以上で感知する。その1分間毎に処理された平均合成加速度を使用した。重量100gと軽量で本機を患者の右腰部にベルトで固定し2から7日間装着した。尚,ESR,CRPは測定日前後1週間以内のデータを使用した。AI、Face Scaleを午前10時から12時までの間に実施し、その24時間以内に身体活動量評価を開始した。RAの身体活動性は、2から7日間の24時間総カウント数をtotal count (TC)とし同じく6時から12時の時間帯をmorning count (MC),12時から18時までの時間帯をafternoon count (AC),18時から翌朝6時の就寝帯をnight count(NC)と分類した。データ解析は1時間単位毎のカウント数に修正し算出した。全ての測定値は2から7日間の測定日数の平均値を使用した。
【結果】
 身体活動量とRAの炎症マーカーとの関係は、外来患者13名の平均身体活動量は、TC 142049±52832、MC 48644±23590、AC・44894±21176、NC 41683±24467であった。平均ESRは59.3±38.9mm/1時間、平均CRPは3.41±2.65mg/dl、PSL使用者は9名いた。平均Face Scaleは7.6±1.97点、平均AIは48±13.9%、平均10m歩行時間は10.9±2.27秒であった。TCとESR、CRP、Face Scale、AIの各に逆相関を認めた(p<0.05)。また、ACとFace Scale(p<0.01)、NCとFace Scale(p<0.05)を認めた。TCと10m歩行時間、ADLテストには有意な相関は認めなかった。
【考察】
 従来RAの評価は、筋力や関節可動域(ROM)、リーチ、疼痛、関節のこわばり、或いは歩行速度などが測定され、ADLは各病院で独自の日常生活テストが使用されている。罹患歴に伴い筋力、ADL能力、歩行速度は、低下を認める傾向にある。これは、進行に伴う関節破壊と筋萎縮、ROM制限、変形により生活能力が低下する事ことによる。RAの理学的評価には、炎症が身体機能や生活活動へ及ぼす影響が十分考慮されておらず、この点は患者の状況推測や測定者の経験に基づく判断に委ねられる現実がある。今回の我々の研究からTCに深く関わっている項目は、結果から炎症マーカー、Face scale、AIの項目であった。RA患者が再獲得したADL動作が実生活を通して持久性を持ち機能しているか否かを評価する際は、炎症マーカーの動向やAI、Face Scaleなどに配慮しながらリハビリテーションを展開する必要ある。
【まとめ】
 関節リウマチのTCと炎症マーカーとの関係を調べた。実際生活での身体活動量とESR、CRP、は有意な逆相関を認め、身体活動量が病態に深く関連していると考えられた。同時に、AI、Face Scaleにも有意な相関を認めた。RAのリハビリテーション評価や治療において、炎症マーカーやAI、Face Scaleの値に十分配慮したリハビリテーションを展開する必要があることが示唆された。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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