九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
会議情報

下肢体幹複合運動の筋活動について
-ボールホッピングとQ-Squatの筋活動-
*岩元 千波中村 勝徳中村 裕樹竹内 明禅
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 134

詳細
抄録

【はじめに】
 臨床において下肢あるいは体幹障害のある症例に対し、下肢体幹複合運動としてセラボールを用いた訓練を行っている。しかし、これまで細かな設定をして施行していたわけではなかった。そこで今回、角度・速さの設定を行い、より有効的な方法を検討し、若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象】
 下肢・体幹に既往のない健常者9名(男性6名・女性3名)、平均年齢は25.25±2.78歳である。
【方法】
 セラボール(直径55cm)を用い、座った状態で跳ねる運動(ボールホッピング、以下BH)を行い、以下の条件別にて筋活動を測定した。
1):膝角度を30°・60°・90°・110°の4種類
2):メトロノームにてリズムを80回/分・120回/分・160回/分の3種類
3):運動方向を上下・左右の2種類
なお、BH時の下腿は中間位とし、上肢は下垂した状態にて運動を行った。また、同様な運動の比較としてクオータースクワット(以下Q-S)のリズムをメトロノームにて80回/分・120回/分の2種類に分けて測定した。
筋活動電位の計測は、表面筋電計NORAXON社製MyoResearchを用い、測定筋は右側前脛骨筋(TA)・腓腹筋(G)・大腿二頭筋(BF)・外側広筋(VL)・内側広筋(VM)・大殿筋(G-M)・脊柱起立筋(PVM)・腹直筋(R)とした。BH、Q-Sともに15秒間測定した。
 得られた以上の波形を整流平滑化し、筋電図平均値を算出した。これらより、膝角度同一にてリズム別での比較・リズム同一にて膝角度別での比較を運動方向別に行い、筋活動が有効的に行われている条件を検討し、またQ-Sにおいての筋活動と比較した。
【結果】1)BHの上下方向の筋活動平均値(単位はuv)
・膝角度30°の場合(図1)・膝角度60°の場合(図2)
・膝角度90°の場合(図3)・膝角度110°の場合(図4)
2)BHの左右方向の筋活動平均値
上下方向と比較すると、同条件の中でVL、VMにおいては高値が認められた(p<0.01)。その他6筋に有意差は認められなかった。
3)Q-Sの筋活動平均値
 リズム80回/分で、VL152.08、VM135.74、PVM30.90、R28.57、120回/分で、VL148.24、VM112.01、PVM40.84、R38.77とVL、VMはBHより高値(p<0.01)、PVM、Rは低値(p<0.01)、その他の5筋に関しては有意差は認められなかった。
【考察】
 今回の結果より、BHは膝角度30°よりも角度を増す方が、8筋ほぼすべての筋活動量の高値が認められた。これは、膝角度30°はほぼ伸展位の状態で、肢位を保つ事が優先となり、その為支点が離れる。しかし、角度を増すと支点が近づき、筋張力をより感じると考える。
 各リズムでその有効性を考えると、それぞれの角度での有意差が多かった120が高い効果があると考える。これは歩行に例えると、80が大体普通の歩行速度と考えると、120は急ぎ足、つまり軽いジョギングをしている位の速度と予測される。160ではリズムについていく事が優先になり、運動を円滑に行う事が難しいと考える。
 また左右方向の運動は、上下方向と比較するとVL、VMのみがより高値であり、選択的な運動が可能と考える。
 Q-Sにおいて、VL、VMは高値、PVM、Rは低値を示している。またリズム80と120を比較すると、リズムが遅い方が、VL、VMの筋活動量は高値を示している。これらの結果より、BHにおいては膝角度90°110°、リズム120が有効性が高く、下肢の筋だけでなく体幹の筋活動も認められ、下肢体幹の複合運動がより効果的にできると考えられる。今後は運動処方として、角度・リズム等の詳細な設定を行っていきたいと考える。

  Fullsize Image
著者関連情報
© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top