九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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当院におけるストレスケア棟の現状と今後の課題・方向性について
*山口 良美椎葉 隆関 一彦瀬尾 奈緒美川越 悦子阿多 京子
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キーワード: ストレスケア, 精神科, 開設
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p. 153

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抄録

【はじめに】
 当院は、平成15年1月「古賀病院」精神科を「古賀総合病院」へ移転すると共に、新たにストレスケア棟を開設した。今回は、ストレスケア開設から現在までの1年余りを振り返り、作業療法(以下OTとする)部門としての今後の課題と方向性などについて分析検討したので考察を加え報告する。
【ストレスケアとは】 
 現代では高度な情報化が進み、新しい時代に対応するメンタルヘルスが必要とされている。その一端が、気軽に立ち寄れる神経科クリニックへの需要の増加という現象に現れている。にもかかわらず、入院治療が最適と判断されても、対応するのは従来の精神科しかなく、旧来のイメージから二の足をふむことも少なくない。ストレスケアは、そういった現代のニーズにあわせ、精神科の専門的治療という目的とともに快適に過ごすことなどを第一に考えた施設と言われている。
【施設紹介】
古賀総合病院
診療科数:19
病床数:343床(ストレスケア92床含む)
ストレスケア病棟
・病床数
2F開放病棟 50床(ストレスケア25床、慢性期25床)
3F閉鎖病棟42床
・患者状況(平成年6月時点)
入院患者:男性29名、女性53名(計82名) 統合失調症69%、うつ病・神経症等10%、 その他21%  平均年齢63.6±12.3歳
外来患者:統合失調症28%、うつ病・神経症等42%、その他30%
 入院患者の多くが旧「古賀病院」から移動してきた患者であり、ストレスケア対象患者は比較的少ないのが現状である。要するに、ストレスケアとして機能しているのは一部であり、機能分化が完全に出来ていない、いわゆる移行期の施設・状況にあると言える。
 一方、当院は総合病院における精神科の役割を果たす必要もある。一般的に総合病院の精神科の役割としては1)身体合併症医療、2)リエゾン、3)身体医への精神医療教育、4)精神科救急などが求められている。その為、当院では3F病棟において身体合併症治療へ取り組んでいる。
【ストレスケアOT】
 歴史:当院は、平成10年にOTを開設しており、その歴史は比較的浅い。開設以前は看護サイドを中心としてOTに準ずる活動が実施されていた。
 実施状況:対象は、原則、入院患者のみである。OTプログラムに若干の変更はあったものの、ほぼ従来の活動を実施している。具体的には外来講師を招いて行う書道・押し花等の活動や、運動療法(散歩、エアロビ)、手工芸、調理、菜園活動等である。月間スケジュールを作成し、各病棟1日1回ずつOT活動を行っている。1ヶ月のOT実働日数は、平均22日。一日平均患者数は、約40名である。
 ストレスケア対象(うつ、神経症)患者がOT活動に参加するのは、原則、従来の入院患者と関係が取れた場合、患者本人の希望があった場合となっており、ストレスケア対象患者のみの活動は行っていない。
【考 察】
 今回ストレスケア病棟開設から現在までの状況を整理、検討することで、いくつかの問題点が見えてきた。1)ストレスケア対象者のみのOT未実施、2)活動の多様性、3)患者の高齢化、社会的入院、4)外来OTの未確立等が問題点としてあげられる。そこで、今後の課題・方向性としては、OTプログラムの見直しを行い、ストレスケア対象患者のみのOT実施や、外来OTの確立を行っていく必要があると考える。一方、従来からOTアプローチは精神面と身体面をセットと考え、活動を計画してきた経緯がある。しかし、患者の高齢化に伴い転倒が増加している状況にある。よって今後は、今まで以上に身体面を意識したアプローチを行っていく必要があると感じている。
【おわりに】
 本学会を機会に一年間を振り返ることで、プログラムの整理、検討、分析などを行うことができた。結果、問題点及び今後の方向性がより明確になったと考えられる。
 しかし、現状ではストレスケアという概念が未確立な部分もあり、ストレスケアでのOT実施報告は少ない。その為、手探りでOTを行っており、今回の報告においても主観的なものが主であり、客観性に関しては他者の指摘を待つまでもない。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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