九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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患者のADL向上への貢献と情報交換を目的とした「ミニカンファレンス」の取組みと質の向上について
*古賀 郁乃鈴東 伸洋渡 裕一中園 聡子濱田 桂太郎松下 兼一井黒 誠子
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p. 26

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抄録

【はじめに】
 当院は平成14年7月よりPT2名、OT2名を専従に置いた回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)を開設し約2年が経過した。これまで患者のADL能力向上、スタッフ間の情報共有、連携強化を目的に、動作指導・介助方法の伝達、検討を「ミニカンファレンス」(以下、ミニカンファ)という取り組みの中で行ってきた。そして「できるADL」と「しているADL」の格差を認識しADL訓練へ反映してきたが、その討議内容を活かしきれていない現状もある。今回、患者のADL場面において動作獲得・向上が図れるようミニカンファを改善し、有効に運営していくため、看護師(以下、Ns)、介護士(以下、Cs)およびリハ課スタッフ(以下、リハ)に対しアンケートを実施した。その内容を検討し、若干の考察を加え報告する。
【対象・方法】
 対象は当院回復期リハ病棟に所属するNs・Cs29名、リハ21名、計50名とした。アンケートは無記名選択記述方式にて行った。設問は、1.開催日・時間帯の適切性、2.実施時間の適切性、3.患者の選択方法の適切性、4.開催内容への満足度、5.ADL能力向上への貢献度、6.回復期リハ病棟スタッフ間での介助方法の理解、統一性、7.情報交換の場としての活用度、8.ミニカンファ開催における病棟・リハ課の連絡手段、9.その活用度、10.その他、の10項目と、リハへa.内容が活かされているか、b.活かされていない時の対処法の2項目、Ns・Csへc.内容を業務中意識しているかの1項目を加えたものとした。
【結果】
 結果を図に示す(上が病棟、下がリハ課の結果)。ミニカンファというハード面での存在価値は、Ns・Cs・リハともに大部分が認めているという結果が得られた。しかし、一回の開催時間の短さや、それに伴う情報交換の限界、実際の患者へのADL指導の有効度の限界なども結果として反映された。また、リハは指導した内容に対し、十分に活かされていないとの回答が多く、Ns・Csは業務的な理由から意識するが行えない、口頭での模擬的指導では十分理解できず、活用が困難との意見も散見された。
【考察】
 今回の結果より、ミニカンファの存在はNs・Cs・リハともに認めているが、その内容を患者に十分に反映できておらず、カンファレンスという機能はいまだ不十分と考えられる。その理由として、一回の時間的短さや開催時間の位置付け、専従以外のリハの病棟ADL訓練の実施がいまだ消極的で、口頭での実技指導中心となり、患者を交えた直接的アプローチ方法の伝達ができていないこと、非参加者に対するNs・Csの情報交換の薄さ、そして関与する全スタッフの意識付けが不十分なために起こっているのではないかと考える。また、リハ実施時における患者の状態、病棟という生活空間内での患者の状態を相互に情報交換する場としての認識がある一方、現在のミニカンファはリハからNs・Csへの一方的な指導となることが多く、病棟も受身的な参加となっている部分があり、相互にADL向上を考える場としての機能はまだ果たされていない。また、Ns・Csとリハ、相互からの情報もまだまだ専門職としての知識・技術的側面からみた意見が多く、生活全体を支援できていないものと考えられる。
ミニカンファの運営は、リハ課内で立ち上げた回復期リハ病棟委員会が主体で行い、病棟との橋渡し的な存在となっているが、今後、患者個人レベルでのADL遂行状況の情報提供も必要ではないかと考える。これまでADL介助方法の統一、相互の情報交換、「できるADL」と「しているADL」の格差の認識、改善を目的としたミニカンファを行ってきたが、今回の結果より、様々な問題点が明らかになった。今後、開催時間や開催方法を再度検討し、チームとしてのスタッフの意識改革を含め、Ns・Cs・リハでどのような視点で統一したADL(患者の生活)をみていくかを考えていかなければならない。そして、ミニカンファがADL向上に寄与できるよう、客観的な効果判定の導入も今後の課題である。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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