九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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フォームローラーエクササイズの肩関節痛への影響
*白石 浩一川島 圭司伯川 浩太郎
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p. 47

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抄録

【はじめに】
 近年では、健康に配慮して運動をする傾向にある。コンディショニングエクササイズのひとつとしてフォームローラー(心材:低密度ポリエチレン、外皮:ターポリン、サイズ:直径15cm×長さ98cm、重さ:920g)を用いたエクササイズが日本で紹介され、導入しているチームや競技者が増加傾向にある。このエクササイズを治療に応用している医療機関も増加している。今回、臨床で一般化されている疼痛評価としてVisual Analogue Scale(以下VAS)によりフォームローラーエクササイズ(以下FRex)が、肩関節の疼痛緩和したことを無作為化コントロール群を設定して検討し、確認した。
【方法】
 (1)対象
 医療系専門学校在校生において、VASによる疼痛評価を学習した学生で無作為に研究の了承を得た運動群77名(18歳から21歳,平均18.7歳)、コントロール群として非運動群39名(19歳から32歳,平均22.1歳)を対象とした。
(2)評価項目
 質問紙調査
 肩関節周囲痛に関する質問紙調査をFRex実施前と実施1週間後に行い、有効な回答のあった者のみを集計対象とした。(著しい体調不良者は対象外とした。)疼痛は通常時の痛み(慢性痛含む)と動作時の最大悪化状態の痛みを分けて回答した。
(3)手順
 FRexは10種目を基本的にゆっくりとしたペースで痛みの増強しない範囲で若干のストレッチ感が得られるように口頭指示を与え背臥位を中心に実施した。(一部腹臥位含む)1グループ20名以内にして、同時に実施した。時間は10分程度とし、2グループ実施した。
 1週間後の再検査まで特に運動制限は指示せず、通常の日常生活を過ごすように説明をした。
 非運動群に対しても1週間後の再検査まで特に運動制限は指示せず、通常の日常生活を過ごすように説明をした。
【結果】
(1)質問紙調査
 肩関節周囲痛の最大悪化時疼痛に緩和傾向への有意差が認められた。(P<0.05)しかし、通常時に見られる慢性的な疼痛に対して有意差は、認められなかった。非運動群(コントロール群)においては慢性的な疼痛のVAS検査のみ有意差が認められなかった。その他の項目はすべて疼痛の悪化傾向へ有意差が認められた。(P<0.05)
【考察】
 疼痛の評価としてVASは臨床で簡易的に複数に同時に実施できる検査として実施した。その信頼性、妥当性についてはさまざまな見解がある。しかし、一般人に行うVASより医療系に関与する人物で実施した場合の信頼性はさらに向上する。ただし、あくまで主観に基づく検査である為、被験者本人の前後の評価の信頼性は高いがその他も同等とは肯定できない問題点もある。
 FRexによる悪化時の疼痛緩和の要因として、1.筋肉のストレッチ効果。2.筋肉のマッサージ効果。3.ゆっくりとした運動によるリラクゼーション効果。4.これらの相乗効果が考えられる。
 慢性痛に対して有意差が認められなかった要因としては、1.1回のFRex介入では慢性的な状態の改善は困難。2.通常時に比較して悪化時疼痛の平均値の方が高かった為、改善としての数値的範囲が狭かった。3.非運動群は疼痛に対して何も介入していないことから自然回復以外に改善の要因が少なく今回は疼痛の維持もしくは、悪化の傾向となったと考えられる。
 被験者からの感覚としては、背中がまっすぐ伸びた感覚がする。気持ち良いなどの意見もある反面、最初の段階は背中が痛いなどの意見もあり、実施前に個人の希望に合わせてタオルなどを巻くなど接地面への考慮の必要性が示唆された。リスクを最小限に抑え、FRexの原理・原則を踏まえて実施することで、さらに多角的視点から検証し、今後はその実用性を検討したい。
 最後に現状として、臨床で普及しつつあるが、そのEBMを確実に示すためにも今後の研究を継続する予定である。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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