九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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骨粗鬆症に対する運動指導の検討 [第1報]
*松本 智人
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p. 49

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抄録

【はじめに】
 高齢化社会において最も危惧される骨粗鬆症について当院ではDr、Ns、PT、栄養士とチームアプローチが進められている。PTの関わりとしては平成15年度より骨粗鬆症患者に対して歩行評価を行っており、今回その結果を検討し、運動指導を考察したのでここに報告する。
【対象】
 当院で骨粗鬆症の治療を受けている患者のうち骨密度のデータ(QDR1000型を使用し、Lumber2から4のいずれかを測定)と歩行評価のデータが揃っている27名(全て女性、平均年齢75.5±7.7歳)を対象とした。合併症(リウマチ、糖尿病など)により他の薬を併用している患者は8人で脳血管障害は対象外とした。歩行評価の項目は(1)10m全力歩行、(2)片脚起立、(3)ファンクショナルリーチ、(4)40cm台昇降、(5)最大一歩幅である。
【方法】
 1、年代別に歩行評価の平均を比較してどの項目がどの年代で低下しやすいか。2、歩行評価の各項目で関係があるかを検討する。3、歩行評価の項目と骨密度に関係があるかを検討する。統計処理として2、3に対しては単回帰分析を用いて検討した。40cm台昇降に関しては安定して可能を3点、手すり、杖使用で可能を2点、さらに不可能を1点として、他の項目との相関比を求めた。
【結果】1、60歳代と70歳代で差が認められたものとして片脚起立時間、10m全力歩行時間、ファンクショナルリーチが挙げられる。70歳代と80歳代では片脚起立時間で差が認められた。2、10m全力歩行とファンクショナルリーチにやや弱い相関(y=0.0048x+0.5448、R2=0.5以上)が認められた。その他の項目同士では優位な相関は認められなかった。3、骨密度とファンクショナルリーチにやや強い相関(y=-0.167x+11.95、R2【考察】
 高齢者のバランス能力が70歳代で急激に低下することは足底圧重心動揺計によりいくつかの文献で報告されている。そして今回の結果より骨粗鬆症患者でも70歳代で著しくバランス能力が低下し、重心動揺が決定因子である10m全力歩行にも影響していることが分かった。また、骨密度とファンクショナルリーチに相関が出た理由として、体幹のアライメント異常による重心線のずれなどが考えられる。
骨粗鬆症に対する運動指導として歩行が一般的だが年齢以上の骨密度を得るには1日1万歩、歩かなければならず継続は困難である。また、文献によって高齢者では1日5000歩で充分と幅があるため、継続を第1として「短時間でもいいので毎日散歩するように」という指導を行った。それと並行して手軽に行える片足立ち運動を指導した。その後のフォローとしてテェックシート(散歩、運動した日と転倒した日を記入)を渡し、Nsが行っている4ヶ月に1回の骨密度測定のときに提出してもらい、効果判定や骨密度の変化が歩行評価に影響するかを検討していきたい。
【まとめ】
 今回の結果より骨粗鬆患者は骨密度が低下するほどバランス能力が低下しやすく、転倒しやすい体になっているといえる。よって骨粗鬆症に対する運動として骨を強くする歩行や負荷をかけた筋力訓練だけでは不十分と思われ、片足立ちや継ぎ足歩行などのバランス運動が必須となる。
 今後の課題としてバランス能力低下に関しても原因は様々なので当院で簡単なバランス能力評価を作成し、各個人に合ったバランス運動を指導していきたい。また、当院の骨粗鬆症外来に参加できない心身の虚弱な高齢者、自覚がない高齢者をどのように予防するかも大きな問題である。そこで当院のスタッフをはじめとする医療に向き合う人たちでCGA(総合機能評価)を作成し、地域住民が主体となった適切な支援を行える環境作りに励んでいる。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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