九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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片麻痺患者の起き上がり所要時間と体幹機能の関連性
*八谷 瑞紀大田尾 浩有馬 幸史溝上 昭宏弓岡 光徳
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p. 60

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抄録
【背景と目的】
 起き上がり動作は日常生活における基本的な動作のひとつである。しかし動作パターンが多岐である事から報告は散見されるのみである。
 本研究では、片麻痺患者の起き上がり所要時間が体幹機能に影響を受けやすいと考えTrunk Control Test(以下TCT)を実施し、起き上がり動作と体幹機能との関連を検討することを目的とした。
【対象】
 当院へ入院している、脳血管障害による片麻痺患者22名(右片麻痺10名,左片麻痺12名、男性15名,女性7名)年齢67.0±9.8歳、発症から99.6±54.7日経過した患者を対象とした。
【方法】
 背臥位から非麻痺側へ起き上がり、端坐位になるまでの時間を2回測定し最短値を採用した。起き上がり動作は口頭での合図で開始し介助は行わなかった。体幹機能は、「麻痺側への寝返り」「非麻痺側への寝返り」「 坐位バランス」「起き上がり」の4項目を、「できない(0点)」「何かに掴まるなどでできる(12点)」「普通にできる(25点)」の3段階で評価を行う、TCTを使用し算出した。統計処理はSpearmanの順位相関を用いて検討し、危険率1%未満を有意水準とした。
【結果】
 起き上がり所要時間はTCTで100点を記録した患者では、全員が14.1秒以内で行えたという結果が得られた。TCTで49点であった患者は10.0秒から79.4秒と所要時間に大きな差が認められた。
起き上がり所要時間と体幹機能との相関係数は有意な負の相関(r=‐0.606、p<0.01)を示した。
【考察】
 本研究の結果により、起き上がり時間と体幹機能の関連が認められた。体幹機能が高値を示した患者であれば起き上がり時間は短い結果がでている。このことより体幹機能の向上を治療項目のひとつに挙げることは、患者の身体機能的に有効であることが示唆される。
起き上がり動作の際には、腹部の筋が重力に抗し体幹を動かすこと、保持すること、運動速度をコントロールすることが必要である。しかし對馬らによると健常高齢者による起き上がりパターンは、加齢とともに発達学的に退行したパターンが認められたとする報告がある。このことより治療者側は加齢に伴い運動パターンが変化することを理解した上で、説明する必要があると考えられる。さらに脳血管障害を伴う患者においては、「非麻痺側からの起き上がり」のみを指導するだけでなく、様々な条件下でも遂行できるように多様な動作説明を行うことが望ましいとされている。
 今回、片麻痺患者の起き上がり所要時間と体幹機能との関連性を調査したが、今後は患者の全体像を捉えるためにもバランス機能、四肢の機能、高次脳機能障害などを含めて調査する必要があると考える。
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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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