九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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在宅重症心身障害児(者)の訪問リハビリテーション
地域療育等支援事業における訪問療育の取り組み
*中村 誠寿
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p. 7

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抄録

【はじめに】
 2003年度より施行された支援費制度など、近年在宅医療、保健、福祉の動向は劇的な変化を遂げている。この中当園では、1997年10月より障害児(者)地域療育等支援事業(以下支援事業と略す)において在宅重症心身障害児(者)(以下在宅重症児者と略す)や知的障害児(者)への援助活動の取り組みを行っている。援助活動とは障害者のライフステージに応じた地域での生活支援であり、施設の持つ機能を活用しながら身近な地域での療育指導、相談及び各種福祉サービスの提供の援助、調整を行う。支援事業の形態は大別すると訪問療育、施設支援、外来療育があるが、当園作業療法士が積極的な関わりを持つ訪問療育について取り上げ、在宅重症児者の持つニーズを統計的に把握し、どのようなサービスの提供が出来ているかをまとめた。また、サービスの提供に伴い必要となる職種間での連携についてチームアプローチの観点から評価を行ったので報告する。
【研究目的及び方法】
 支援事業の中の訪問療育について作業療法士が行った1999年度から2003年度の総件数及び各年度別件数の推移を統計化し、地域への関わりの実態を把握する。また、作業療法士が行った内容について項目別に件数を比較することで提供された内容から在宅重症児者の持つニーズを把握する。併せて訪問療育全般における職種別の関わりを抽出し、複数のサービスを必要とする在宅重症児者の特性から適切なチームアプローチの提供について評価を行う。
【結果】
 1) 訪問療育における作業療法実施件数及び内容別割合 実施件数は1999年度から2003年度までの5年間で586件あり、1年当たり概ね117件となっている。また、作業療法実施における内容別割合は機能訓練(一部ADL訓練)が42.9%、呼吸訓練が29.4%、発達援助が18.0%、住宅改修を含む補装具関連が9.7%となっている。
2)訪問療育における職種別件数割合 職種別割合は1999年度から2003年度までの5年間において、作業療法士が61.8%、言語聴覚士及び保育士が19.7%、看護師が14.9%、指導員が3.6%となっている。
【考察】
 1) 訪問療育における作業療法実施の実態
 作業療法の実施に関しては支援事業開始時に比べ、最近4年間で急激に増えている事から地域の訪問リハビリテーションに対するニーズが高くなっていると言える。しかし施設側の問題として、訪問リハビリテーションの実施は土曜日のみで行っており(まれに祝日の場合あり)、人員不足の影響もあって地域のニーズに対応しきれていない現状もある。
作業療法実施内容を項目別に示すと機能訓練(一部ADL訓練)及び呼吸訓練割合の合計が70%を超えており非常に高い。ここでの機能訓練とは、主に廃用症候群の予防を指し、筋の短縮や骨萎縮あるいは関節可動域制限や変形の増強の予防に対するアプローチを示す。これは、OT実施を希望する在宅重症児者の中にレスピレータの24時間管理や気管切開あるいは胃ろうや導尿をしている方があり外出制限を伴うような重度な障害を有していることが要因と考えられる。また、最近では住宅改修を含む補装具関連が増えており介護者の高齢化から環境整備への配慮が必要であり、介護量の軽減が在宅重症児者の生活を支える重要なテーマであると考える。この反面、外来通院が出来ないが発達援助を必要とする就学前の幼児においてもリハビリテーションニーズが増えており、この年齢層における重度化傾向も伺える。
2) 訪問療育における他職種の実施とチームアプローチの現状について
 訪問療育における作業療法士以外の職種の実施割合は保育士及び言語聴覚士で近年増加傾向にある。保育士については作業療法を受ける利用者との重複もあり身体・精神面での障害が重い場合が多い。これらは、介護者の持つニーズに医療を通じた身体機能の援助のみならず精神機能への関心が高いと考えられ、療育効果の向上を望んでいるものと思われる。また、看護師による訪問看護については、施設側の問題から派遣できる人員が少なく、定期的な身体状況のチェックといったニーズに対応できていない。訪問看護の実施項目の内訳としてはコーディネータとの連携のもと他の社会資源に繋ぐ役割が大きく、ここではリハビリテーションとの連携が重要と言える。
【まとめ】
 訪問療育においてリハビリテーションを希望する在宅重症児者が多くなっており、期待されるサービス内容も多様化している。また、在宅重症児者にとって医療・身体介護・生活介護が重要視される中、療育効果の向上といった精神面でのニーズも反映された結果となった。このように在宅重症児者の障害特性を考えた時、当該地域で可能となる社会資源を視野に入れ、様々な職種の持つ機能を効果的に反映できるようコーディネートする必要がある。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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