九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
会議情報

頚随損傷者の復学について
2症例を通しての実態とアプローチ
*渡辺 良一木村 利和小宮 雅美八尋 雅子谷口 真紀植田 尊善椎野 達奥 和久江原 善人
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キーワード: 頚随損傷者, 復学
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p. 8

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抄録

【はじめに】
 今回、在学中(中学校)に頚随損傷者となり、当センターから学校への復学が可能となった2症例を経験した。この2症例を通し学校での生活と環境、復学に向けたアプローチについてまとめたので報告する。
[症例1] R.T氏 男性 14歳(受傷時)
診断名:C6前方脱臼骨折 Zancolli 左右C7A
当センター高位評価表 左右 C7B Frankel A
現病歴:H14.10.20柔道の試合中に受傷S病院へ搬送
10.21 当センター搬送 ope施行 10.22リハ開始 H15.7.19退院〈市立T中学校〉本人 H15.1.24 2.10(2回)に学校訪問 4.7当センターより登校を開始(2回/週)
退院後は、自宅より毎日登校
距離 約20km(自宅) 40km(当センター)車(母親:約40分)車(母親:約1時間)学校内排尿:尿取りパットを装着、養護教員が交換 3回/日 筆記能力:ホルダー式の自助具にて可能。ボールペン使用、訂正は横線にて削除 うつ熱対策:アイスノン、扇風機(学校備品を使用) 霧吹き使用
校内移動:階段昇降については、教員1人と友人が担いで移動。その他は基本的に設置のスロープ等を使用。 本人スロープ自走可能、段差(5cm程度)可能 学校の対応:基本的な介護は、養護教員が対応。 保健室に専用ベッドを設置 排便 自宅にて週3回(日・水・金)帰宅後 学校で失便時には養護教員が処置オムツ交換。家族の介助:毎朝の準備(整容、更衣等)。登下校の搬送。カバンの持ち運び(朝教室まで)。
[症例2]
M.N氏 男性 15歳(受傷時)
診断名 脊髄梗塞 Zancolli 右C7A左C6B ? 当センター高位評価表 左C7A右C7B Frankel A現病歴H14.9.26 部活中(バスケットボール)突然発 症 近医受診後 Y大付属病院へ搬送 その後、他院にてリハの為入退院 H15.9.1当センター入院 9.2リハ開始 10.12退院〈市立H中学〉
距離1.5km(自宅より)登校:車(母親:2分)下校:W/C自走(約30分)途中急な橋があり、当初は友人が介助。その後担任。学校内排尿:学校内に設置の身体障害者用トイレを使用。自己導尿(W/C上にて可能)。導尿のセッティングは、養護教員。トイレ移動は特に問題なし。筆記能力:ホルダー式の自助具にて可能。消しゴムの使用不可。訂正は横線にて削除。校内移動:階段昇降はエレベーター使用(担任付き添い)。基本的に設置のスロープを使用。一カ所のみ 段差介助(友人)。 本人スロープ自走可能、段差(5cm程度)可能。家族の介助:毎朝の準備(更衣・排便等)。朝登校時に搬送。学校の対応:専属教員を配置し対応、当初特殊学級として授業を担当。その後、普通教室での授業へ移行〈県立H高校〉今春一般入試にて合格。 登下校距離1.5km(復学にいたった中学校に隣接)登校:車(母親:2分) 下校:W/C自走(約30分)現在、橋も車椅子自走可。学校内排尿:職員トイレを改修し使用。導尿セッティングは母親(毎朝)。入り口段差スロープ設置。筆記能力:ホルダー式の自助具にて可能。消しゴムの使用が可能となったが、横線にて削除を多用。校内移動:階はキャタピラ式の昇降リフター(県内の高校より貸借)にて移動。1階から3階に10分所要。 車椅子固定・操作の為、母親とヘルパーが介助(毎回)。その他、移動についてはスロープ等を使用し可能。家族の介助:毎朝の準備(更衣・排便等)。朝登校時の搬送。階段昇降(毎回)。導尿のセッティング(毎朝)。学校の対応:段差解消・通路確保の為の改修等と休息 室の設置。現在、専属教員の配置とヘルパーの介護 内容について交渉中。排便(中・高を通し現在も継続中)自宅にて週3回(月・水・金)登校前6:30前後に起床し排便を行う(約30分所要)。 登校後、失便時には帰宅し処置(母親迎え)* 両者にわたり、改修が必要な箇所については、当センター福祉等コーディネーター江原氏が具体的改修案を提案し改修。
【まとめ】
1,リハの役割。
 本人の身体的な能力、ADL自立度、体力を高める。 なるべく早く送り出すのが理想。
2,学校への協力依頼・調整。
 本人の状態・具体的な改修・介護方法等について専門スタッフからの意見と働きかけ。
3,介助力の確保。
 学校の体制内容とキーパーソンの能力。条件により、ヘルパー・ボランティア等を活用。
4,学校側の受け入れ意識等。
 今後、障害者の復学に対して受け入れ、設備等の面で深く理解されていくことを望みたい。その他、学校生活の実態・改修の具体的な内容・詳細な経過等を加え、当日発表したい。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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