九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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回復期リハ病棟における在宅復帰について
~在宅復帰難渋例の実態調査をもとに~
*山口 勝史
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p. 97

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抄録

【はじめに】
 当院は、平成12年11月に回復期リハビリテーション病棟を開設しチームアプローチによって在宅復帰を目指し取り組んできた。しかし、約36%が様々な要因により在宅復帰できず、病院や施設などへ転帰していた。そこで、今回在宅復帰に至らなかった難渋例の実態調査を実施し、今後の課題を検証したので報告する。〈BR〉対象は、平成14年4月から平成16年3月の期間に入院し、在宅復帰できなかった症例のうち調査可能であった108例である。疾患別内訳としては、脳血管障害70例、整形疾患27例、廃用症候群11例であった。
 方法は、調査リストを作成し、各リハ担当者に患者情報、在宅復帰できなかった要因について該当項目にチェックを行ない、詳細については記入形式とした。
【結果】
 患者情報における退院時の障害老人の日常生活自立度としては、脳血管障害においては70例中、Bランクが28例、Cランクが30例となり重症例が多かった。さらに、痴呆の程度に大きな片寄りがないことから、それだけでなく後遺症による意識障害や理解力の低下により、ADLの介護量が増加することがこの表から示唆される。
 また、整形疾患では、痴呆老人の日常生活自立度ではIIレベル以下が27例中18例を占めていることから、運動能力が高くても痴呆により介助が必要となるケースが多かったことがうかがえる。
 疾患別転帰先内訳において、脳血管障害は急性期病院や近医への転院が26例、当院の療養型医療病棟・介護保険病棟への転棟が22例であった。また、整形疾患は施設への転院が12例であった。
 脳血管障害の在宅復帰できなかった要因として、医学的管理が必要な重症例と家族事情が多かった。家族事情に関しては、老老介護や日中介護する人がいないなどの介護力不足と、介護するのが大変、介護する自身がない、など介護者の心理的負担という2つの側面があった。また、医学的管理が必要な重症例に関しては、経管栄養や体調の変化が激しいなどが要因として挙げられた。実際に、家族の意向としては在宅希望であったが、家庭で医学的管理を行なうには、家族の負担が多く、現在の在宅ケア支援機能だけで補えないこと、親類からの協力が得られにくいこと、不安感から在宅生活をあきらめてしまったケースもあった。
 またここで、在宅ケア支援機能の不十分の項目における件数が少なかったが、これはリハ担当者の情報提供不足と症例に合わせた在宅サービスの把握不足が要因であったと考える。
 整形疾患において、家族事情は脳血管障害と同様のことが言える。痴呆に関しては、身体能力は高いものの理解力の低下や問題行動により、介助量が多くなることが影響していると思われる。
 廃用症候群においても、重症患者及び家族事情が多くを占めていることがわかった。
【まとめ】
 今回、在宅復帰難渋例の実態調査を実施した。特に、在宅復帰できなかった要因として、医学的管理が必要・日常生活に支障をきたす痴呆を有する・家族事情などが要因として多く挙げられた。家族事情の背景には、老老介護や日中の介護者不在、介護者の心理的負担などによる介護力不足が多かった。
【今後の課題】
 今回、在宅復帰できない要因として、家族事情が最も多い結果となった。
 これらのことから、より具体的な在宅ケア支援サービスを各スタッフが把握し、介護量によって適切なサービスの紹介をしていくことが必要と思われる。また、退院前訪問時に地域のケアマネージャーに積極的に同行を依頼するなど、地域支援機関とのパイプづくりを行なうことで、より安心できるサービスの紹介が可能になると思われる。
 また、家族の社会背景や心理状態を把握しておくために、MSWや家族と密な情報交換を行ない、タイミングの良い適切なアドバイスが可能になると思われる。
 さらに、カンファレンスをはじめ、日常から密な情報交換により他職種と介助方法や言語など統一した対応をしていき、各専門分野から積極的に指導・説明を行なっていくことが大切と考える。それにより、在宅復帰に向けての家族の準備を適切に援助していけると思われる。
 今回、行なった実態調査の結果を踏まえ、今後、患者・家族にとって負担が少なく安心して過ごせる在宅復帰を目指していきたい。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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