九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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当院の回復期リハビリテーション病棟における退院患者の現状
自宅退院に向けて
山田 晴彦*城戸 達也山中 紘泉 明佳日野 史子
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キーワード: 自宅退院, 背景因子
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p. 98

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抄録

【はじめに】
 当院は349床からなる療養型病床群であり、昨年の10月に回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)を開設してから半年が経過した。しかし自宅退院に継げることが困難な症例も少なくない。
 そこで、回復期病棟から自宅退院へ継げることが困難だった症例について精神機能面とADLの側面から検討することを目的として分析を行い、今後の取り組み方について考察したので報告する。
【対象】
 平成15年10月1日から平成16年4月15日の期間で、回復期病棟に入院した61例のうち、退院した患者27例を対象とした。
 退院した27例の内訳は、自宅退院17例(男10、女7、平均年齢79.53±8.77歳)自宅外退院10例(男2、女8、平均年齢85.0±9.31歳)である。また、疾患の内訳としては、整形疾患9例(自宅退院6、自宅外退院3)、脳血管疾患15例(自宅退院8、自宅外退院7)、その他3例(自宅退院3、自宅外退院0)である。
【方法】
 対象患者を自宅に退院した自宅退院群と自宅外に退院した自宅外退院群に分類し、入院時および退院時のFIM、NM スケールの合計または各項目を比較検討した。
 なお統計学的検討に関しては、MannWhitneyのU検定、または多重比較検定のロジスティックモデルを用いた。
【結果】
 1.入院時および退院時FIMの合計の比較では、自宅退院との有意な関連を認め(P<0.01)。しかし18項目(小項目)および6項目(中項目)の比較では有意な関連を示す項目は認められなかった(NS)。
 2.入院時及び退院時NM スケールの合計の比較では自宅退院との有意な関連を認めた(P<0.01)。しかし各項目の比較では、有意な関連を示す項目は認められなかった(NS)。
 3.FIM、NM スケールの合計での多重比較においても有意差は認めなかった(NS)。
 4.各項目での多重比較では、分散が小さい項目があったため解析できなかった(NS)。
【考察】
 今回の調査ではADLの自立度が低い場合や日常生活における精神機能の低下を認める症例では自宅退院が困難であるという結果になった。また、当院の回復期病棟の特徴として、病院や施設で発症して入院してくる患者も多く、それらの患者が自宅退院出来ていないという結果も得られた。それらの症例に重ねて言えることは、重症例であり身体機能の回復が困難であること、痴呆など精神機能面に問題があり、ADL動作の獲得が困難であること、施設入所が長いため家族との関係が疎遠になっている場合が多いことなどである。
 しかし、施設で発症し入院してきた症例で、FIMおよびNM スケールが低い点数ながらも機能訓練やADL訓練と並行し、家族を含めたカンファレンスの開催、家族へのリハビリテーション教育の実施、さらにケアマネージャー、ソーシャルワーカーと連携して退院後の在宅サービスの調整を十分に行ったことで自宅退院に継げられた事例もある。
 これらの経験も含め、社会生活行為の能力の総合的な低下を認め、自宅退院が困難と思われる症例に対しても、安易に施設入所を選択せず、早期から自宅退院に向けての背景因子を考慮したアプローチを行い、一症例でも多く自宅退院へ継げられるリハビリテーションを提供していきたい。
【まとめ】
 1.入院時、退院時ともにFIM及びNMスケールの得点が低い患者や施設・病院で発症した患者は、自宅退院できていない傾向が示された。
 2.自宅退院できていない患者への背景因子に対するアプローチ不足が原因と考えられた。
 3.今後は、早期より背景因子に対しても、積極的なアプローチを行なうことにより、多くの患者を自宅退院へ向けることが課題である。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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